ANSYSの日本法人であるアンシス・ジャパンが、Amazon Web Service(AWS)のクラウドを基盤としたエンジニアリングシミュレーション「ANSYS Enterprise Cloud」の国内提供を開始して約1年が過ぎた。ANSYSのVP Enterprise Solutions & Cloud(クラウド担当バイスプレジデント)であるレイ・ミルヘム(Ray Milhem)氏に話を聞く機会をいただいたので、これまでの1年の振り返り、そして将来に向けた同サービスの展望について、話を聞いた。
ANSYSがこれまで進めてきた従来のビジネスモデルは、顧客のエンジニアリング部門に向けて物理モデルシミュレーション製品を販売する、というものである。一方で、Enterprise Cloudはプラットフォームの提供であり、そこはITの運用管理などを担う情報システム部門が担当することとなる。そのため、単にツールを提供して終わり、というわけにはいかない。「ベンダのサポートやクラウドホスティングパートナーのサポートも行う。もちろんパブリッククラウドのプロバイダ各社もだ」(Milhem氏)とのことで、現状、AWSに向けた提供を開始しているが、今後、Microsoft Azureへの対応を進め、その後、Google Cloud Platform(GCP)にも対応を図っていく計画であるとする。
ANSYSのビジネスモデル。上部が従来のモデルで、それぞれの産業に向けて必要なツールの提供を行ってきた。下部はプラットフォームビジネスを行う場合の考え方で、物理シミュレーションやエンジニアリングといった上部を補完するものとなる |
実際のEnterprise Cloudの利用イメージだが、最初に顧客にAWSのアカウントを開設してもらった後、数時間程度で専用のバーチャルプライベートクラウド(VPC)を構築。そこには仮想のデータセンター(バーチャルデータセンター)が設置され、その上で各種のシミュレーションツールを自由に活用してもらう、といったものとなる。こうした用途については、以下の4つのニーズが特に大きいという。
- 完全に機能するHPCをクラウド上で構築してもらい、必要とするすべてのバッチ処理を実行してもらいたい
- リモートでの3D可視化といったビジュアル化
- 計算途中のシミュレーションデータまで含めたすべてのメタデータ、ファイルシステムを保管したい
- 数百TBクラスのストレージを保持したい
「こうしたニーズをユーザーは意識しないで活用することができるようにしたのがVPCであり、アクセスするためのゲートウェイとなる。これにより、ユーザーはブラウザとPC環境さえあれば作業を行うことが可能となった」(同)ということで、現状、オンサイトで提供されているマルチフィジックス解析ソリューションなどもクラウド上でまったく同じように利用できる環境が整備されているとする。