ネームプレートに埋め込むような形なども含めて、ビーコンはさまざまな形状が考えられたが、最終的にはユーザーが好きなネックストラップやバッグ等に取り付けられる独立型のタグが採用された。金、銀、黒という3色が用意され、カラビナ風のフック構造を備えており、簡単にネックストラップ等に取り付けられるつくりになっている。本体重量は10g。手にした時に少し重量を感じるが、これは高級感を狙ったものだという。

さまざまなビーコン

「もしサービスとして社外に展開する場合にはコストや電波の通りやすさなどについてさらに考える必要があるでしょうが、今回はまずは使ってみたいと思ってもらえるように見映えを優先した部分があります。ハードウェアメーカーの方からいろいろなアドバイスをいただきました」(加藤氏)

ビーコンの電源はリチウム電池を利用しており、交換なしで3カ月程度利用できる見込みだ。これは3.5秒に1回の送信を行う設定で、実験期間中は使い続けられる計算だ。

「ビーコンでよくノイズについて言及されますが、あれは非常に細かい感覚でいろいろな機器に埋め込まれたビーコンが発信しあう環境の場合です。用途にあわせた設定でノイズを軽減するために、3.5秒という間隔を決めました。実際に使った時、どうしても取得エラーは出るのですが、これが10秒間隔だと二度失敗した時に30秒待たなければならないことになってしまいます。これは長すぎるので、2度失敗しても10秒程度で取得できるようにしようという設定です」(加藤氏)

スキャンが実行されるのはビーコンの電源をオンにし、スマートフォン側でアプリを開いている時に限られる。到達距離は3~5m程度に抑えるほか、通信が大量に発生しないよう一度取得した相手のプロフィールは1時間程度再取得しないようにするなど工夫がされている。

取材時はサービス開始から約1カ月が経過したときたったが、最初の登録作業が終わってアクティブになった社員の割合は6割を越えているという。

「必ず使う場所があればもっと伸びるのでしょうが、デイリーで50人くらいは使ってくれています。そのまま机に入れられてしまうのではないか、ひょっとすると使われないのではないかとも思っていたので、これは思ったよりも多いという感じです」(加藤氏)

今後は、新入社員向けに行っているスタンプラリーイベント等でも紹介機能を利用することを想定している。社内の人材検索なども需要があると考えられるが、社外ネットワークに対応したiPhoneから利用することを考えると、社内の個人情報のレギュレーションに対応しながら作って行くことには難しい部分もあるという。

「ビーコンというと設置されている場所に近づくと何かが拾えるというものが多いのですが、持っている人が動くというのが発想の転換でした。実はグループ会社からすでに導入が可能なのかという問い合わせを受けています。ただ実運用を行うのであれば、運用のチームをきちんと作らなければなりません。それが1つのハードルですね」と櫻井氏。

あくまでも社内的な実験であったプロジェクトだが、思いがけずグループ各社を含む外部から注目を浴びたという。ユニークなビーコンの使い方として、新たな方向性が開けそうだ。