オフィスチェア、座り方の極意

今回、訪問したのは「岡村製作所(オカムラ)」と「イトーキ」のショールーム。いずれも各社が胸を張って勧める高機能オフィスチェアがずらりと並ぶ空間だったのだが、両社の担当者が強調したことはまったく同じだった。

「とにかく、チェアには深く座ってください」(イトーキ担当者)
「おしりをぴったりと背もたれにつけてください」(オカムラ担当者)

今回アテンドしてくれた両社の担当者が語るところによると、背もたれに触れない姿勢でイスに座るユーザーは思った以上に多いのだという。推奨する姿勢として示してくれた座り方は、それとは真逆で、両社とも背もたれに寄り添うように体を預けた姿勢だ。

オカムラ(左)、イトーキ(右)担当者の座り方比較。どちらも腰の部分を背もたれにぴったりとつけ、体をイスにあずけている

ひざは90度に折り曲げて、足の裏がぴったり床につくように調節する。膝裏と座面がくっついてしまうと血行不良の原因になるため、指3本~拳ひとつ分程度空けるのが好ましいという。この部分の間隔は、座面の奥行きを変える機構で調整できる。キャスター付きのオフィスチェアには多く搭載されている機構なので、調整した記憶の無い人は一度チェックしてみてほしい。

動画「The Posture はたらく姿勢を考える」の冒頭で示される「とってしまいがちな姿勢」

オカムラが制作した姿勢にまつわるムービーで紹介されている「体に負担がかかる座り方」の図を見てみると、確かに「背もたれに触れない」座り方をしている人は案外多くことに気がつく(筆者は「浅がけ」タイプだった)。一方、イトーキではこうした状況を受けて、浅く腰掛けがちなユーザーに向け、腰掛けると自動的に背もたれが動いて腰を"迎えにいく"ような機構を採用した製品も展開している。

どんなに背もたれの部分の機構に工夫が凝らされていようとも、体が触れていなければ支えることはできない。言われてみれば当たり前のことだが、意識したことはほぼない部分だったのではっとした。

また、前ページでも参考にした日本オフィス家具協会の「姿勢」に関するチェックポイントでは、「座面の奥まで深く腰掛ける」ことに加え、「骨盤上部をしっかり背もたれにつける」とあった。上長の隣に位置しているなど、オフィスで背もたれによりかかることがはばかられる環境ならば、腰の付け根のあたりをしっかりと背もたれに預けるだけでも、体にかかる負荷がかなり軽減する。

その他のポイントとして、肘を浮かせてタイピングをしていると、腕への負荷が非常に高いという。「体重の8パーセントが片腕にかかる」(イトーキ担当者談)ということなので、長時間の作業で腕にかかる負担は思った以上に大きい。オカムラ担当者は「机の上に腕を載せる」ことを、イトーキ担当者は「可動式の肘置きを使用する」ことを推奨していた。どちらにせよ、上腕が中に浮くほどデスクから離れて座っているのはよくないようだ。