R∞にデータを提供するPAS+とはどのように利用されるものなのかも紹介しておこう。
PAS+は単独で利用することも可能な、デジタルポイントカードシステムだ。来店時にスマートフォンの画面を見せてスタンプを押してもらうと画面上でも確認できる形でスタンプが溜まり、一定の数が集まれば自動的に割引きクーポン等が表示される。そのクーポンの消し込み等も対応可能だ。
この時利用するスタンプは、本物のスタンプと似た形状で、画面にあてて軽く押し込むことでスタンプを押したことになる。スタンプに電池や通信モジュールは搭載されておらず、持ち手部分から伝わる静電気を利用して画面を指でタッチするのと同じような形で押されたことを認識するのだという。
「そのマルチタッチのパターンによってスタンプが何番のものなのかがわかり、ユーザーIDと組み合わせることで、誰が、いつ、どの店舗に来店したのかがわかります。電源もなく通信もしていないので、非常に壊れづらいのも特徴です」と語るのは、バリューコマース 事業開発本部 本部長の古屋裕太氏だ。
すでにカフェ等の飲食店、アパレルショップ等に加えて、コンサート等のイベントでインセンティブを提供するためのツールとしても採用されている。2016年6月までに約100店舗での展開を予定しているが、今後は1,000店舗での採用を目指していくという。
店舗用のスタンプ画面はHTMLで作られており、カスタマイズにも対応。
「ログインして利用することが前提ですから、ユーザーIDの他に誕生日やメールアドレス等も取得できます。来店率や来店頻度が見えるようになり、CRMツールと連携させることでロイヤルカスタマーの育成にも役立てることができます。この情報をR∞で活用することで、オムニチャネルマーケティングが実現するわけです」と古屋氏は語る。
月額10万円で5店舗まで可能
従来はPOSとの連携やQRコードの活用といった、手間とコストのかかる取り組みが必要だったが、PAS+で取得できるデータをR∞で活用することで、非常に簡単にオンラインでの働きかけがどうリアルでの購買に結びついているのか等の計測が可能になる。店舗でどのクーポンが利用されたのか等のデータをR∞で確認できるため、メールマーケティングの成果が即座に見えてくるのだ。
利用価格は、月額10万円からと安価なのも大きな魅力だろう。この価格に、5店舗でPAS+を利用する利用料金やスタンプ価格も含まれている。本格的なコンサルティングは別料金となるが、一般的な活用方法については利用説明の中で行なわれるためヒントを貰った状態で利用開始可能だ。仮に5店舗で1年利用するのならば、120万円でオムニチャネルマーケティングに取り組めるということになる。
この価格と使い勝手を武器に連携ソリューションで狙うのは、テストマーケティングの市場だという。
「オムニチャンネル戦略のハードルはいろいろありますが、まず全社的に取り組まなければならない大きなプロジェクトになるということがあります。当然、一歩踏み出すためには効果がどうなのか、取り組めばいくら売上が上がるのかといった前例がない状態では進められません。そういう状況でのテストマーケティングに活用していただければと考えています」と加來氏は語る。
数店舗でのテスト利用である程度の成果が見られれば、同じ取り組みを全店で行なった場合にどれだけの利益向上が狙えるのかはかけ算で見えてくる。そして、その試算によってオムニチャネルのシステム変更や人材増といった投資にどれだけのコストがかけられるのかも見えてくるわけだ。
「現在ショッピングセンターや不動産、アパレルといった分野にアプローチしていますが、いずれも興味を持っていただいています。みなさん、答えが欲しいのです。オムニチャネルに取り組まなければいけないと考えながらもどこから取り組めばよいのかわからない、LTVが見えてこないという状況で、これが10万円で試せるのならやりたいという反応をいただいています」と語る加來氏は「ECの流通総額に対してリアル店舗の金額は何倍あったか、と考えていただければ、この取り組みの影響の大きさはわかっていただけると思います」と連携ソリューションの利用価値を強調した。