Windows 10は、7時代の"古き良きWindows"と、8、8.1の"タッチ操作最適化Windows"をうまく組み合わせたWindows、という説明が多く見られるOSだ。ただ、マイクロソフトに言わせれば「OSの多層防御をさらに推し進めた、厳重なセキュリティ管理が可能になるOS」というポイントもある。例えば、次期アップデートの「Redstone」でも、大企業向けに脅威検知機能を提供する「Windows Defender ATP」などでセキュリティを強固にしていくと、日本マイクロソフト グローバルビジネスサポート セキュリティレスポンスチーム セキュリティ プログラム マネージャーの村木 由梨香氏は説明する。
Windows Defender ATPこそ、大企業向け機能としての提供になるが、そもそもの多層防御でいえば、サードパーティ製セキュリティソフトを入れずに、既知のマルウェアなどを検知・対処できる「Windows Defender Cloud Protection」や、デフォルトで顔認証などの生体認証システムによるログインに対応した「Windows Hello」など、中堅中小企業でも十分"タメになる"セキュリティ機能がある。
こうした強固なセキュリティという観点があるからこそ、大企業のみならず、中堅中小企業においても導入の進捗を期待すると三上氏は話す。
「(中堅中小企業はセキュリティ意識が薄いのではという質問に)中堅中小企業においても、70%の企業でなんらかの形で情報漏えいが起こっている現状をしっかりと伝えなくてはならない。例えば"サイバー攻撃"というキーワードで中小企業の方にお話しすると、自分たちには関係ないと思われてしまうが、"マイナンバーの漏えいに備えましょう"といった、身近なワードでお伝えすると、セキュリティに対する認識を改めてもらえる。実際にマイナンバー対策も必要ですし、セキュリティがより強固になっているWindows 10をお使いいただけるように周知していきたい」(三上氏)
また、同Windows本部 Windowsコマーシャルグループ エグゼクティブプロダクトマネージャーの古川 淳一氏によると、中堅中小企業の担当者へは、日本マイクロソフトのポータルサイトより継続して情報発信を行っており、セミナーなども開催している。
導入事例作りが鍵に
ただ、実際に企業が大規模導入を進める場合、日本では多くの企業が「導入事例を求める」と三上氏は語る。
「導入検証の支援は日本マイクロソフトとしても行っていますが、他の企業での導入事例を参考にされるケースが多く、さらなる事例作りと、きめ細やかな情報提供も必要だと考えています」(三上氏)
以下の画像は、Windows 10の導入を表明している大手企業のロゴだが、その一方で全社的に導入している企業は一部に限られ、部門単位での導入が実情だという。また、にわかに盛り上がりを見せるWindows 10 Mobileについても「三井住友の一部検証のみ」(三上氏)など、本格的な広がりが見えづらい状況にある。
ただ、地道な導入事例の積み重ねが後々に生きてくるという市場環境、そして、端末が出そろいつつあるWindows 10 Mobileも本番はこれからだ。Windows 10の無償アップグレード期間は7月下旬と、1つの節目まで残された時間はあまりないが、この期限までの"短距離走"の結果が、今後のWindows戦略に大きく響いてくることは確実だろう。