ビッグデータ活用というキーワードが、新しい企業のマーケティング手法等として注目されるようになって久しい。しかし、チャレンジしたは良いが、思うような結果が出なかったというような事例もあり、多くの予算を注ぎ込んでも十分な成果が得られないのではないかとデータ活用に不安を持っている企業もある。

そこで、IoTやビッグデータを含む、企業がデータ活用を成功させるポイントは何なのか? これまで多くの案件を手がけてきた、日本ヒューレット・パッカード エンタープライズサービス事業統括 ポートフォリオ戦略統括本部 エグゼクティブコンサルタントの内藤剛氏に話を聞いた。

日本ヒューレット・パッカード エンタープライズサービス事業統括 ポートフォリオ戦略統括本部 エグゼクティブコンサルタントの内藤剛氏

内藤氏によれば、これまで多くの企業のデータ活用をサポートする中で、見えてきたポイントは、データ活用を主導する部門の社内的な立ち位置にあるという。

「情報活用推進室のような専門チームを作った場合、それがユーザー部門側に立っているケースや、IT部門を中心とした組織でもユーザー部門と親しい関係にある場合はうまくいっています。IT部門主導型は失敗例が多いですね」と語る。

内藤氏によれば、推進部門の立ち位置以外にも、活用すべきデータの選定、システムの構築方法などにも課題があるのだという。

SNSデータ活用にグラフは不要

ビッグデータという言葉が盛り上がった時、最初に活用できるデータとして注目されたのはSNSだ。ユーザーの生の声が語られており、これを分析すればマーケティングや商品開発に活かすことができるだろうという目論見だ。

「多くの企業が取り組んだ結果、SNSのデータはあまり使えないということが見えてきました。一見宝の山のように見えて、場合によってはゴミの山でもあるからです。私の知っている例では、2,000件の書き込みを分析したところポジティブなものが多いという結果を、分析ツールが出してくれていましたが、、実際に目視で確認すると、そのうち1,800件はbotやアフィリエイト目的の発言だったということがあります。純粋なユーザーの心の声である200件だけを機械的に分析するのでなく目視で確認すると、ネガティブなものの方が多かったのです。SNSは分析する対象を絞り込む必要があり、そもそも当てにならないデータが多いのではないかということがわかってきています」と内藤氏は語る。

大量にかき集めたデータを機械的に分析し、グラフを描くというのが初期の「ビッグデータ活用」のイメージだが、それでは良い結果は得られないというわけだ。

内藤氏は「グラフを描いてしまうとつい信用してしまいますが、中身をよく見ると違うこともあります。さらにグラフができたからといって、それを見てどう活用すればよいのかわからないという例も多いですね」とSNSデータの難しさを語った。

では、どうデータを活用すればよいのか? それは「場を選ぶ」ことと、「目視で確認する」ことが鍵となるという。

「SNS全体を見ても意味がないと気づいた企業は、価格.comや@cosmeのような、よりリッチな声の集まるところを集中的に見るようにしたり、自社でそういった場を作るように工夫しています。またグラフを描くのではなく、A4用紙1枚分程度に要約し、キーワードを色分けして、パッと目に入ってくるものから気づきを得るようなやり方に変わってきているのです。対象を絞り込み、キュレーションすることで気づきを得て、次のアクションにつなげるという使い方になっています」と内藤氏は語った。

こうした変化が出てきたのは、先駆者である企業が試行錯誤した結果だという。最初の考えではうまくいかないとわかった時、効果が出るやり方を模索する試行錯誤がデータ活用の成功においては絶対に必要だと内藤氏は強調した。