AIに人間臭さは必要か?
ドラえもんと聞いて私たちがもうひとつイメージするのが、お節介だけど少し間の抜けたユニークなキャラクター。ロボットだけど人間味のある部分に魅かれる部分もあるだろう。ドラえもんのような人工知能を開発するにあたり、この部分を齊藤氏はどのように考えているのだろうか。
「AIに人間味があったほうが私はいいと思います。ないとあまり使われなくなるような気がします。というのも、人と人の関わりの中でも"コミュニケーションロス"というのは発生するもの。最初からプログラミングする必要はないと思いますが、ある程度の許容はあってもいいのではないかと感じます。自動車を制御するのであれば効率だけで人間味は一切必要ありませんが、コミュニケーションのためのAIですから。一番重要なのはAIが人間に対して興味があるか。そうでなければコミュニケーションが成り立たないと思います。その人なりの夢を達成するお手伝いをするための人工知能なので、嫌われない程度にお節介だったりするということも大切ではないかと」
ネットスマイルが開発している人工知能は、ネット上にある全データを理解し、入力した"夢"に対してインターネット上からすべての情報を引っ張ってきて解析し、それをもとにユーザーのパーソナリティと結びつけながら会話をするというのが大まかな仕組みとのこと。しかし、人工知能そのものが持つデータは限定したものになるという。齋藤氏はその理由を次のように話す。
「日本語の全部のデータを入れたら、多分ドラえもんは支離滅裂になってしまいます。というのも、そもそも人間というのは自分の持っている知識と経験は限定的なもの。ゆえにパーソナリティが出るのであって、万能なドラえもんというのはないんです」
学校に行けない子供たちのために
「コンシェルジュみたいな存在で、題材が身近なものが欲しかった」ことが、ドラえもんのような人工知能の開発のきっかけと話す齋藤氏。5年以内に世界に向けて示せるものを形にしたいという目標を掲げている。実用化にあたっての具体的なビジネスモデルについて、次のように明かす。
「今、具体的にお話をしているのがコールセンターの応答。人間がしゃべっているようなインターフェースとしての人工知能です。人間が触れ合うところはビジネスモデルがあると考えています」と齊藤氏。
「もっと大きなところでは、世界には発展途上国で学校に行けない子どもたちが5億人ぐらいいると言われています。例えばエボラ出血熱が蔓延しているような地域には教師が行きたくても行けません。でも、ドラえもんがそういうところの子どもたちに教えてあげる。貧しい国に無料で配ることで世界のインテリジェンスが底上げされれば経済格差や情報格差がなくなって世の中がもっとよくなるのではないかと。ドラえもんのような人工知能がそれを解消させる存在になれれば」と、さらなる夢も語る。