LINE兄弟会社がついに参入
そしてこの春に、SNSの雄が満を持してビジネスSNSへ参入する。それがLINEの兄弟会社で、韓国NAVERグループ傘下のワークスモバイル(Works Mobile)だ。ワークスモバイルは、もともとNAVERグループ内のコミュニケーションプラットフォームとして利用されてきたが、昨年より外部販売への下準備を進めてきた(2015年4月にグロバールの韓Works Mobile、6月に日本法人を立ち上げ)。社外への販売は日本市場が初のケースで、LINEが浸透した日本だからこそ、テストマーケティングの意味合いもあるのだろう。
機能は「LINE」で提供しているトーク機能だけにとどまらず、組織内アドレス帳やメール、カレンダーなど、グループウェアに必須な機能を一通り内包している。Webサイトの直販だけでなく、法人向けとしてパートナー販売も行い、すでにLINEの「LINEビジネスコネクト」で販売パートナーとなっているトランスコスモスをはじめとする認定パートナー8社からも提供される。
サービスとしての「Works Mobile」は、無償プランが用意されておらず、1ユーザーあたり月額300円の「ライト」プラン、月額500円の「ベーシック」プラン、月額1000円の「プレミアム」プランの3プランが存在する。コストを抑えた「ライト」プランであっても、メッセンジャー機能や無料音声通話(VoIP)機能、アドレス帳、グループ掲示板のホーム機能、企業管理者による管理機能が用意されており、ビジネスタイムにおけるSLAも用意されている。ベーシックプランでは、ライトの機能に加えてメールとカレンダー、Drive(ファイル共有など)機能を提供し、プレミアムプランでは、トークのアーカイブ機能、メール保存容量の無制限化などが行われる。また、APIも145個用意し、認定パートナーを通して、Office 365などとの連携も図れる予定だ。
LINEの兄弟会社によるグループウェアのメリットは、やはりLINEサービスとほぼ同一のUI/UXを享受できる点だろう。LINEライクではなく、LINEそのものといっていいインタフェースを利用できるため、ユーザー教育を行う必要がない。こうしたグループウェアは、少なからず情報システム部門に教育コストがかかるものと認知されているが、LINEそのものであれば、多くの従業員が利用していることから、説明の必要がない。そのため、先行導入している企業から「(従業員から)まったく問い合わせがないため、普段の業務に集中できている」(Works Mobile関係者)という声が寄せられたという。
こうした教育が必要ないメリットは、パートタイマーの従業員にもアカウントを付与できる点にもある。従来は、メールアドレスを個別に付与する必要があり、正社員以外への付与が難しかったが、グループウェアとしての運用のため、アカウントの払い出しについて柔軟に対応しやすい。
また、モバイルに最適化を図りつつ「PCでできることをモバイルでもフルに使えるようにした」(ワークスモバイルジャパン 代表取締役社長の松橋博人氏)と機能面でも充実を図っている。実際にスマートフォンアプリで短時間ながら操作した限りでは、これまで使った経験のあるグループウェアと比較しても多機能なものに感じた。
加えて、LINEの特徴であるスタンプも当然採用しており、9セット432種類の"ビジネス特化型"スタンプが利用できる。「TPOに応じて、フォーマルなものだけでなく、カジュアルかつビジュアルなコミュニケーションが求められる」と松橋氏が語るように、ビジネスの現場でもスタンプによる簡便なコミュニケーションは今後伸びてくることだろう。
群雄割拠な企業内SNS
ただ、先に触れたように、SaaS型の企業内SNS(グループウェア)はすでに既存ベンダーがいることから、LINE兄弟会社でも一筋縄ではいかないだろう。Yammerが2月2日(現地時間)にOffice 365においてデフォルトで利用できるようにすると発表し、プライベート向けのFacebookも「Facebook for Work」という企業向けSNSの準備を始めている。また、ローカルに目を向けると、TalknoteはKDDIやナムコ、Yahoo!ニュースといった大手が採用しており、WowTalkも亀田製菓や佐川急便、ピーチ・ジョンといった採用例の公開が続々行われている。
抜群の知名度と洗練されたユーザーインタフェースだけで何事もうまくいく…というわけではないのが法人市場。Works Mobileが市場を開拓できるのか要注目だろう。