製品化が進んでいる非放射型の技術に比べると、「Cota」のような放射型のワイヤレス給電技術には、まだクリアしなければならない課題が多い。その1つが給電効率の問題だ。例えば「WattUp」という技術を開発する米Energous社は、5.8GHz帯を使用する送電機(トランスミッター)をCESに出展していた。

この送電機では15フィート(約4.6メートル)離れた製品にも給電できるが、距離が長くなれば給電効率が落ちるため、実際には5フィート(約1.5メートル)程度での使用を想定しているとのこと。0~5フィートで4W、5~10フィートで2W、10~15フィートで1Wの送電というスペックシートだそうだ。

一方の「Cota」では、2.4GHz帯を使用して、約10メートル離れた場所に1Wの送電が可能となっている。Wi-Fiなどと同じ周波数帯を使用するため、レシーバー(受電チップ)さえ組み込めば、アンテナはWi-Fiと共用できる。しかし、給電効率を高めるためには専用の設計が必要になるという。放射型では、超音波を使って送電する米uBeam社の技術も注目されているが、こちらもやはり給電効率が大きな課題になっているようだ。

バケツのような送電機から、受電チップを組み込んだ単三電池型バッテリーと、バッテリー内蔵のスマホケースへ送電する「Cota」のデモ

放射型のワイヤレス給電では人体への影響も懸念されるが、Ossia社は「Cota」がすでに米FCC(連邦通信委員会)準拠のテストをクリアしていることから、安全性は確認済みだとしている。あとは正式な認可が受けられれば、米国内で製品化できるものの、日本への導入にはまだ高いハードルがある。

「日本にはこうした放射型のワイヤレス給電に対する規制がなく、導入するためにはまず、法整備を働きかけるところから始めなければならない」(KDDI)

スマートフォンをはじめ、スマートウォッチのようなウェアラブル製品やスマートキーのようなIoT製品など、私たちの周りには今、毎日のように充電しなければいけないものがどんどん増えている。ワイヤレス給電はこうした充電の煩わしさから解放してくれる、まさに夢の技術だ。

先行する非放射型の技術の規格が統一され、より大きなデバイスでも使えるようになり、かつ放射型のワイヤレス給電技術も広く普及すれば、自宅で、クルマで、カフェで、PCからウェアラブルまで、電池の減りを意識せずに使える世の中がやってくるかもしれない。

規格の標準化や、技術革新による給電効率の向上、さらに国内の法整備の行方など、今後もワイヤレス給電の動向は注目すべき技術だろう。