ビッグデータを活用した商品・サービス開発例として松田氏が挙げたのは、健康に関するデータを保険会社と連携することで割引を可能にする方法や、さまざまなデータから疾病リスクや死亡リスクが軽減したと判断されれば契約中でも割引を可能にするという方法だ。そのために必要なデータとしては、血圧や心拍といった生体データがある。また、運動や食事、睡眠、投薬といった行動・習慣データ、健康診断や結婚・出産といったイベントデータも必要となる。
そのために必要なデータとしては、血圧や心拍といった生体データがある。また、運動や食事、睡眠、投薬といった行動・習慣データ、健康診断や結婚・出産といったイベントデータも必要となる。
「そうしたデータを最終的に料金やサービスデザインに取り込むには、構造化されたモデリングが必要です。こういうデータを持つ人が最終的にどうなるのか、どの程度リスクがあるのかを判断することは、データがきちんと取れて不正因子を取り除くことができれば可能だと思っています。ただし、お客様がそれを望まれるかどうかはまだ疑問があります」と松田氏は、プライベートなデータを民間企業に預けることをユーザーが納得するかどうかは難しいだろうこと、また取得した情報の管理・活用方法の検討が必要である点を指摘した。
しかし、それが叶って多彩な情報をもとにリスクの分析ができ、事前に得た情報と現在の情報を組み合わせることで予防的な情報提供や、病後のサポートなどが可能になれば、現在の死亡や入院といったトラブルがあった時に金銭的なサポートを行う保険会社の事業領域がさらに広がる。
予防のフェーズに関しては情報から自身の健康状態を評価する「知る」ことと、それを基にした提案に従って健康状態を「改善」すること、そして改善された健康状態に応じて保険料の割引等によって「還元」することを繰り返すサイクルが考えられるというのだ。
フランスでは開始済!データに合わせた保険料算定
「いくつかのサービスアイテムがすでにローンチされています。そこにビッグデータを使って、より予測的な、モデリングに基づいた付加価値を追加していきたいと考えています」と語った松田氏は、すでにスマートフォン向けに提供している健康アプリ「Health U」を紹介。現在は健康状態に合う病院検索や、電話相談サービスは利用可能だが、基本的には健康を見守り、促進するためのアドバイスを行うためのアプリだ。将来的にはこのアプリと外部のウェアラブル機器等を連携させて、健康状態の改善を読み取って還元等につなげたいという。
また、AXAフランスがアクティビティトラッカーという端末を利用し、利用者の運動データから保険料を割り引くサービスや、自動車運転の技術を機器で読み取り、統計データと照らし合わせてリスクを算定することで一定の点数以上ならば保険料を割り引くサービスを実施している事例も紹介された。
「ビッグデータを活用してお客様の健康で幸せな時間を長くしたいというアンビションを達成しようと思うと、アクサ生命単体では実現できません。我々はリスクの専門家であって、アプリや医療の専門家ではありません。そういう意味で、お客様をサポートするバリューチェーンを構築するためにグローバルレベルで提携を積極的に進めています」と松田氏は、デジタル&ビッグデータ関連の企業とのグローバル提携や、シリコンバレーや上海、パリやシンガポールでのLab設立などの取り組みについても語った。
そして最後に松田氏は、「データが人々の生活や事業構造自体を大きく変える可能性を秘めているということで言えば、保険業界は本丸中の本丸だと思っています」とビッグデータ活用について語った。