やや時間が経ってしまったが、12月2日に都内で開催されたARM Tech Symposia 2015 Tokyoの内容をお届けしたいと思う。といっても、基本的にARM Tech Symposiaの位置付けは11月にサンタクララで開催されたARM TechConのサブセットであり、内容はかなり重複している。そこで、ARM TechConのレポートでは省いた基調講演の内容、それと幾つかの追加された情報をまとめてお届けする事にしたい。
まずはアームの内海社長(Photo01)が挨拶に立ち、昨今のIoTビジネスに触れて、「日本はマイコン立国なので」日本のメーカーにとってはある種お家芸の分野ではあるが、その一方で携帯のビジネスの様にガラパゴス化しかねないことを指摘、これを避けるためにもARMのエコシステムを活用して欲しいと簡単に締めくくった上で、基調講演に移った。
エコシステムが地球規模に拡大している
今回は基調講演が4本立てという豪華なものであるが、まず最初はRene Haas氏(Photo02)によるMorning Keynoteである。内容はARM TechConでCEOのSimon Segars氏が行った"Building Trust in a Connected World"のほぼリピートである。Segars氏の講演そのもののハイライトはYouTubeで公開されているが、幾つかアップデートされたスライドもあるほか、そもそもこちらの講演を紹介していないので、まずこちらをご紹介する。
2000年代においては、Supply Chainが全てを握っていた(Photo03)。現在もこれはまだ尾を引いている。例えばスマートフォンのエコシステムで言えば、こんな感じだ(Photo04)。25年にわたる革新や改良の積み重ねにより、1991年に同じ機能の製品を作ると3億5600万ドル掛かったであろうものが、今では数百ドルで手に入るようになった。「より安く」のニーズがなくならない限り、このトレンドそのものが無くなる事は無い。
Photo03:スケールメリットを生かして低コストに製品を提供する、というのが市場を握る鍵であった。 |
Photo04:これは、もしiPhoneに相当するものを1991年の技術で作ったら幾らになるか、という試算。 |
ただ、これに加えてここ数十年はExperience(体験)が重要になってきた(Photo05)。低価格だが、色々と機能や性能が欠けている製品よりも、より良い体験を味あわせてくれる製品にシフトする、というのはこれは携帯電話の変遷を見るまでも無く明らかである。実はこれもまた、別に珍しい話ではない。昨今のスマートフォンの高機能ぶりを考えれば、これは明らかだ(Photo06)。より高機能・高性能に、という要求もまた留まるところを知らない。
Photo05:例えばカセットからMDなどを経てFlash MemoryベースのPMD(Portable Media Player)に推移していった、なんていうのはその代表的な例だろう。 |
Photo06:これは1991年のRadio Shackの広告。HuffingtonPostの元記事は「この広告に出ている製品でやれる事全てが、貴方のスマートフォンで出来る」 |
更に考慮すべきことは、エコシステムが地球規模に拡大していることである(Photo07)。そして、さらにに多くのものがInternetに繋がろうとしている(Photo08)。この状況でスケールを確保するための要素がこちら、というのがARMの見解である(Photo09)。では具体的に、どんな形でこれからの製品というかアプリケーションが発達してゆくか、を医療・自動車・スマートシティを3つを例に取り紹介した(Photo10)。
ただこの実際の例は動画の形で紹介されて撮影し切れなかったのでスライドは省略させていただく。医療では、病室や処置室などに多数の医療用モニターや治療装置が既にはいっており、これらが全てConnectedになること、人命を扱っているから勿論セキュリティが大事な事、そして様々なメーカーがさまざまな装置を導入するから、これが等しく接続できるためにはOpenな規格でないとまずい事などが示された。
続く自動車向けでは、まずはInfortaimentやClusterが統合化されつつあるが、その次にはADASがやってくる。このADASの中にはV2X Comminication(車々間通信だけでなく、車と信号やその他との通信)が含まれており、これが他からの警告を受け取ったり、逆に自車から警告を送る(急ブレーキを掛ける事を後続車に送るとか)といった事もありえる。これらはConnectedであることが当然前提であるし、そうした通信を改竄されたりすると大事故になりかねないから、これまたセキュリティは重要である。そして勿論多くのメーカーがここに製品を提供するわけなので、相互接続性の確保も重要である。
3つ目となるスマートシティでは、ここでけは唯一実際に製品というかサービスを提供しているCompologyの例を取り上げた。同社は廃棄物収集業向けサービスを提供する会社である。具体的には専用のゴミ箱の中にWaste Collection Sensorsと呼ばれるセンサーを搭載。ここでゴミの収集具合をダイナミックにサンプリングし、このデータをクラウド上で処理することで最適なゴミ収集ルートを提供するというもの。同社はこれを"WasteOS"と呼んでいるが、このWasteOSに関する紹介が行われた。
最後に、こうしたエコシステムの構築に欠かせない要素をARMが提供できる(Photo11)、と締めくくってHaas氏の講演は終了した。