実際の戦略としては、ファンの拡大および既存顧客の育成にポイントを置いている。ファンの拡大は、新規のコンタクト情報を取得することで見込みユーザー獲得につなげるもので、一方の既存顧客の育成は、あらゆる顧客接点でユーザーを知り、つながりを深めるというものだ。

ファンの拡大と既存顧客の育成

森氏は、ソーシャルメディアでこれらを実現する例として、10月に発売された新商品「サッポロ ブラウンベルグ」での検証結果を示した。検証では、Twitterでブラウンベルグ関連のツイートをしているユーザーに対し、公式アカウントから返信するとロイヤルティが上がるのではないかという仮説に基づき、実施前後でユーザー行動の変化を比較している。

Twitterでブラウンベルグ関連のツイートをしているユーザーに対し、公式アカウントから返信

検証の結果、公式アカウントからの返信後にリツイート(以下、RT)してくれるユーザーは24%増加。商品についてツイートしてくれるユーザーも38%増加している。

森氏は実際のツイートを紹介しながら「ポジティブなツイートだけでなく、『ブラウンベルグはあまり美味しくない』といったネガティブなツイートにも『お口に合わずごめんなさい』と返信してみたところ、他のユーザーからポジティブなコメントがもらえたり、RTで6,000以上のリーチにつながりました。このように、ネガティブなツイートでも返信しだいでポジティブな印象と効果を生み出せるのは、企業にとって大きなメリットになります」と語った。

ソーシャルメディア活用の実施結果

また、購買につなげる反応としては「ブラウンベルグもう出てるのかな」というツイートに「限定発売中なのでお早めに!」と返信したところ、そのユーザーが実際に飲み「美味かった」と感想をツイート。ユーザーとのコミュニケーションが増えることで、満足度向上やファンの深耕拡大に関してもプラスの傾向が見られたという。

小さなPDCAの繰り返しが大きな力に

さらに同社では、発売から3週間でツイートされた日別の件数について、2014年5月に発売したシリーズ商品「ホワイトベルグ」との比較も行っている。

「結果は、どの時点のトレンドでもブラウンベルグがホワイトベルグを上回っていました。延べツイート数はホワイトベルグが合計330件であったのに対し、ブラウンベルグでは1898件です。ツイート数で5.7倍、延べ配信数では17倍と、配信数を大きく伸ばすことに成功したのです」と、取り組みの成果を語る。

「ホワイトベルグ」との比較

そして同氏はソーシャルメディアのメリットを「小さなPDCAを繰り返せる手軽さにあります。多少失敗しても影響は軽微で、むしろ小さな成功を積み重ねていくことが大切です。明確な目標設定と実施、結果の確認、そして策定に落とし込むという繰り返しは大きな力になります」と語った。

さらに「もちろんツールを導入して終わりではありません。何を達成したいのか、このデータを使ってどのような価値を生み出すのかなど、プロセスの検証や判断をする人も必要です」とアドバイスを送った。