日本生活協同組合連合会(以下、生協連)は、各地にある地域生協や大学生協向などに向けて、プライベートブランドであるCO・OP商品を開発し、提供する卸業務を行っている。生協といえば、食料品や日用品などの宅配サービスがよく知られているが、市販品は各地域の生協が独自で仕入れ、CO・OPブランドは生協連から仕入れるというシステムだ。

また生協連では、30年ほど前から組合員(以下、会員)に対するカタログ販売「くらしと生協」も行っており、さらに10年前からはカタログ上の商品をインターネット上で販売する通販サイトの運営も開始した。

「くらしと生協」の通販サイト

生協連がカタログで販売するのは、通常の宅配サービスでは扱われない衣料品、靴・バック、寝具、家具、子供用品などだ。利用するにはいずれかの生協に加入していることが必要だが、現在、利用しているのは、全国の宅配登録会員の1/3強にあたるおよそ380万人で、年間売上は約600億円だという。このうち、通販サイトを利用しているのは40万人くらいで、売上は50億円程度。ただ、近年は通販サイトの売上の伸びは鈍化傾向にあるという。

この点について、日本生活協同組合連合会 通販本部 カタログ供給企画部 インターネットグループ グループマネージャー 峰村健史氏は、「当初は、インターネットの普及に伴い、売上も毎年1.5倍~2倍程度伸びていましたが、最近は前年比105%程度と売上自体はだいぶ踊り場に来ていました。販促施策についても、メルマガで同じ内容を一斉配信するというマンネリ化したものになっていました。かつては、メールの開封率やクリック率も高かったのですが、最近では他社の通販サイト並みに落ちて来ています。そのため、何かしなければと思っていました」と語る。

日本生活協同組合連合会 通販本部 カタログ供給企画部 インターネットグループ グループマネージャー 峰村健史氏

また、各地域生協などでもECサイトを独自で運営しており、販促メールも配信しているため、生協連のメールとバッティングすることがあり、メルマガを多く発行すると迷惑メールと思われる危険性もあった。そのため、配信するメール本数を増やすこともなかなかできないという。

そこで同氏が目を付けたのが、昨年あたりから注目が集まっているマーケティング・オートメーションツールだ。峰村氏はセミナー等に参加して他社の事例を聞くなど、情報収集を開始。いくつかの製品を候補に挙げ、見積もりを取り、導入に向けた作業を行った。最終的に採用したのは、デジミホの「アール・エイト」だ。

「アール・エイト」を採用した理由を峰村氏は、「複数のツールを検討し、相見積もりを取りました。値段はどれもほぼ一緒でしたが、アール・エイトは機能が豊富で、利用者の購入頻度でグループ分けができ、購買情報やサイトログにより、『これを買った人にはこういう商品を薦める』といった利用者ごとに販促ができる点が魅力でした」と説明した。 生協連がツール活用施策として取り組んだのは、メールの最適化だ。

「通販サイトを利用できるのは、各地域などの生協に加入する組合員さんだけですので、他社サイトのように検索で誘導して流入を増やすという施策は採れません。また、会員数を増やすのは、各地域などの生協が行うことですので、我々にできることには限りがあります。そのため、お客様単価を上げるための施策としてのメールマガジンはかなり有用なツールとなります。ただ、これまでなかなか最適化できていませんでした」(峰村氏)

新たなメール施策を実施するにあたって生協連が行ったのが、過去の売上データの分析だ。

「導入時、デジミホさんに過去2年間の売上データを渡して分析してもらいましたが、それによると、初回購入者の多くは100日以内に2回目の購入をしていることがわかりましたので、100日以内に、その人に合ったメルマガを配信しようということになりました。また、1回目の購入は比較的単価の安いインナーを購入するケースが多かったので、そういった組合員さんには2回目にアウターやパンツをお薦めしようと思います。そのほか、ファッション性の高いアウターを買う人は、高額ユーザーになりやすいという分析結果も得られていますので、高単価のものをお薦めする施策を採ろうと思っています」(峰村氏)

ただ、現在はツールを入れたばかりのため、試行錯誤の部分もある。

「顧客属性を絞るとメールの配信数が減ってしまいますので、多少範囲を広げたりと、クリック率を考慮しながら、今後はいろいろ試していきたいと思います」(峰村氏)

このような生協連に対し、実際にデータ分析を行ったデジミホ ソリューション本部 マーケティングソリューション部 部長 高橋憲二氏は、次のようにアドバイスする。

デジミホ ソリューション本部 マーケティングソリューション部 部長 高橋憲二氏

「生協連さんの場合、会員数がどんどん増えるという仕組みではないので、今いるお客様にどう継続的に買っていただくかがポイントだと思います。購入回数が0回の方を1回に、1回の方を2回にするといった取り組みが必要です。また、年1回利用する人が買う商品と、2、3回買う人の商品は異なりますので、このあたりをグループで分け、緻密にやっていく必要があると思います。地域生協さんとの兼ね合いで多くのメルマガを配信できる状況ではないので、その人が買った時間にアプローチすることも必要で、曜日や時間帯など、メールを送るタイミングも最適化していくことが必要だと思います」(高橋氏)

生協連では、今回のツールの導入により、1カ月あたり200万円の売り上げ増を目標に掲げている。

今後の活動について峰村氏は、「現在の一人あたりの購入平均回数は年3回程度で、年間購入金額は15,000円程度ですので、まだまだ上限には達していないと思います。そこで、その人にあった商品をいやがられない範囲でお薦めしていくことをやっていきたいと思います。また、ロイヤルユーザー向け施策として、サンクスメールなどでフォローすることもやっていきたいと思います」と語った。