マイナンバー制度対応、企業によってばらつきが

ほはば 代表税理士 前田興二氏

あと2カ月でマイナンバーの利用が開始されるわけだが、中小企業では実際、どの程度対応が進んでいるのだろうか? ほはば 代表税理士の前田興二氏は次のように説明した。

「マイナンバー制度へ対応できている企業は、1割もいないのではないだろうか。まだ、マイナンバー制度がどういった内容で、いつ番号の通知があり、1月に申請することでマイナンバーカードが取得できるという流れを経営者に周知してもらう段階だ」

前田氏によると、マイナンバー制度への対応に関する積極性は、企業によって偏りがあるという。

「派遣企業やIT企業など、従業員規模が一定数以上で若い世代の環境では、システム導入のニーズがあるが、鉄工所のおじさんなどは恐らくシステムを操作することが難しいだろう。ペーパーによる管理が主流となってくるはずだ。また、中小企業では売上を伸ばすことと資金繰りが優先事項のため、システムやアプリを導入するために費用を捻出することが難しいのが実情」(前田氏)

また、マイナンバー制度に対するマイナスイメージを持っている人も多いという。ほとんど利用されることのなかった住民基本台帳ネットワークの件もあり、今回も利用されない制度になるのではと懸念を持たれていることからも、マイナンバー制度への対応が優先度を低くさせている一因でもあると、前田氏は分析している。

では、マイナンバー制度が導入されることによって、厳しい状況となる業種は出てくるのだろうか?

「クラブなど飲酒店の従業員は副業として働いている人が多いため、マイナンバー制度によって情報が紐付けされてしまうと、本業の会社に発覚してしまう可能性がある。こうしたリスクから、2~3年先には従業員全員がやめてしまう可能性まであると、クラブの経営者は危惧している。また、理美容関係も経営を逼迫させることになるだろう。中小企業では、社会保険に加入していない企業も多い。人件費がコストの半分を占める理美容業界で、社会保険の加入をしなければいけなくなると、従業員の社会保険料を支払うことができないところも出てくるだろう」(前田氏)

このように、中小企業ではさまざまなリスクが浮かび上がっている。