「Supership」という名称は「変にわかりにくい造語は作りたくなくて、最高(スーパー)のものを世の中に出したい、そして"オーナーシップ"という言葉にあるように、自分たち"らしさ"を世の中に届ける(シップ)」から名付けられた。Syn.ホールディングスは、KDDIの子会社として存続し、名称の通りの持株会社として運営され、Supershipが事業会社という位置付けになる。
ただ、1社に統合されても「8割、9割は変わらないと思います」と古川氏。事業統合の現状のメリットはバックオフィスなどの経営上の重複部分の経済合理性が一番だからだ。その一方で森岡氏はその先のビジョンへの第一歩としての経営統合だと強調する。
「より大きなことをしたいと考えていた。それぞれの会社が頑張っていても、"小粒な集合体"。それらが結集することで、パワーが生まれる。幸いにも親会社(KDDI)は大きいし、そこのパワーを上手く使ってやっていきたいと思う」(森岡氏)
その大きな親会社とのやり取りの間では、ちょっとした苦労もあったようだ。
「(Syn.構想発表から1年で大変だったことは?との質問に)スタートアップマインド(考え方)と大企業の考え方の間に立つことは、大変なんだなと感じた(笑)。文化が違うから翻訳作業に苦労したんです。最終的には、お互いに分かり合えたら良かったけど……。スタートアップ、ベンチャー企業って『失敗してなんぼ』という風潮があるけど、大企業は失敗が許されない。そこを乗り越えるのが大変だった」(森岡氏)
「横で見ていて思ったのは、8割はお互いの言っていることを理解しているんですよ。ただ、残りの2割が"お互いの前提"が違うから、認識のズレが生じて『これはこうじゃない』『実は違う』ということがあった。お互いがお互いを理解しようとしているからこそ、大変なんだなと思いましたね」(古川氏)
2社の買収も
また、合併とあわせ、Syn.ホールディングスによるアップベイダーとSocketの子会社化も発表した。こちらはSupershipに合流するのではなく、Supershipと並列したホールディングス傘下の子会社として運営される。
アップベイダーはスマートフォン向けサイト・アプリに動画広告配信サービスを提供しており、動画アドネットワークシステムの機能開発を行っている。主要メディアサイトなど導入社数は400を超えており、リーディングカンパニーとしての地位にいるそうだ。
一方のSocketは、スマートフォンに特化した販促ソリューションを提供している。"おもてなし販促プラットフォーム"の「Flipdesk」は、サービスロンチ後の1年で250社に採用されており、主にECサイトでDBとひも付けたクーポン発行や商品レコメンド、チャット接客などの統合された販促ツールとして評価が高いようだ。
両社はともにスマートフォン向けのアドツールとして、すでに一定の地位を築いている。今回Supershipに統合されたスケールアウトもSSP Ad Generationの月間配信実績が150億impを突破しており、業界トップの実績を持ち合わせている。買収の目的について森岡氏は「動画広告とECサイトにおける販促の広告ツールへの早期進出と事業拡大、シナジー」としており、手薄だった成長分野への投資という意味合いのようだ。
Supershipで引き続き広告事業の担当役員となる山崎氏も、「今後は事業に集中できるため、一つのミッションとしてアップベイダーとSocketが順調に成長していくための道筋を作る」と意気込みを語る。