Imagine Cupでは各チームに与えられるプレゼンテーションの時間は一律10分間となっているが、このWorld Championshipのみ3分間となっている。

また、World Finalsではプレゼンテーション後の審査員とのQ&Aは実施されなかったが、World Championshipでは3名の審査員からそれぞれ3つの質問が行われる。30日に各部門での1位が決定した3チームは一晩のうちにプレゼンテーションを練り直し、限られた時間で審査員らにアピールすることとなる。

だが、さすが予選から含めて世界大会を勝ち抜いてきたチームだけあり、手際良く自らのプロジェクトを紹介している。審査員の質問も意地悪なものが多いが、非常に上手く返していたのが印象的だった。それだけ深くプロジェクトに入れ込み、将来像も含めて描けていることの証左だろう。

3人の審査員は、1人目が俳優で現在はHBOのドラマシリーズ「Silicon Valley」でRichard Hendriks役を演じるThomas Middleditch氏、2人目がMinecraftのリードデベロッパーのJens Bergensten氏、そして3人目が米MicrosoftのテクニカルフェローでHoloLensを開発したAlex Kipman氏だ。

3名の特別審査員。左から米MicrosoftのテクニカルフェローのAlex Kipman氏、MinecraftリードデベロッパーのJens Bergensten氏、俳優のThomas Middleditch氏

特にMinecraftのBergensten氏や、Kinect開発でも知られるKipman氏に憧れを抱いている開発者は少なくないはずだ。3人からは緩急つけた質問が投げかけられたが、3つのチームのメンバーはきちんと正面から受け答えを行っていたのが印象的だった。

特にブラジルのeFitFashionがプロジェクトの重要性やビジネスプランについて理路整然と説明していたが、これは3年間プロジェクトを走らせてきたことで得た経験や情熱がきちんと反映されたものだったと思う。

筆者が29日と30日に取材をしたときはプレゼンテーションしか見ていないため、eFitFashionについては「つたない部分があるかな」といった第一印象があったが、これがQ&Aで内容を深掘りしていくと詳しい説明やより深いアイデアの話が出てくるなど、プロジェクトの背景にあるより深い部分が明らかになっていった。

このあたり、限られた時間でプレゼンテーションを行う難しさみたいなものも感じたりした。

最終的に、優勝の栄冠に輝いたのはブラジルのeFitFashionだった。eFitFashionだけでなく、各3部門で1位のチームには賞金5万ドル、2位は1万ドル、3位に5000ドルが授与される。

Innovation部門で1位のブラジルの「eFitFashion」。Webやアプリから自動的にカスタムメイドの体にぴったりの服を作れるのが特徴だが、衣装合わせが必要なドレスから、体が不自由な人の専用の服まで、さまざまなサンプルを披露。もちろんチームメンバーが着ている服はすべてeFitFashion製だ

部門1位のチームには、それぞれの部門に応じてMicrosoftが提供する学生向けの専用セッションやMicrosoft Venturesのアクセラレータ・プログラムへの参加権が得られる。

また、優勝したeFitFashionのチームメンバーにはNadella氏との1対1ミーティングの場が提供されるなど、"次のステップ"を踏み出すための支援策が次々と提供される。

結果発表。優勝チームはブラジルの「eFitFashion」に。3年越しのプロジェクトがついに1つの形に

Imagine Cupはゴールではなく、あくまでスタート地点に過ぎない。今日入賞できなかったチームも、ほとんど同じ場所にいるといえ、さらに腕を磨いてぜひ次のステップアップの機会を狙ってほしいところだ。

Games部門で1位のロシアの「IzHard(イザード)」。3分間のプレゼンテーション用にデモをアレンジしてきており、3人の説明の息もぴったり。特徴的な映像やデザイン、音楽など、数あるゲームの中ではインパクトが残る。「ゲームはあくまでリラックスのためのもの」と娯楽性も強調している

World Citizenship部門で1位のオーストラリアの「Virtual Dementia Experience」。認知症の世界を体験するソリューションで、現在はOculusを利用しているが、簡易の3Dグラスキットとスマートフォンで代用品を用意することも可能。さらにHoloLens開発者のAlex Kipman氏に向かって「HoloLensを使わせてもらえれば、それに合わせたソリューションも作る」と宣言

参加チームとサポーターら全員での記念撮影。フレームに入りきらないので少し引いた構図で

日本のチーム「すくえあ(Screen AIR)」のメンバー6人と、香川高専で担当教員の鈴木氏、そして日本マイクロソフトで学生のサポートに当たった森田氏と春日井氏で記念撮影。Imagine Cupではルールで4名までのチームメンバーとなっているため、6名中2名はサポートメンバーとして今回は参加した。残念ながら今回入賞は逃したが、プロジェクトは自身が、そして後輩が引き継いでいくことでさらに素晴らしいものになっていくはず。継続は力なりということで引き続き頑張ってほしい