――― オムニチャネルを推進する上で重要となるインフラはどうでしょうか
ニトリでは「製造物流小売業」を標榜し、原材料の調達や商品の企画・製造、販売、配達まですべての仕組みを自前で持っています。物流インフラとしては、年間で300万件、定期的に配送できるエリアの人口カバー率は、日本全国の98%に達するだけの実績があります。しかも、ニトリから配送する商品の多くは家具などの大きいもので、日本国内であれば、ほとんどの地域に2人で配送できる仕組みを持っています。その点が、一般的な物流業者と大きく異なります。
加えて、このほど、物流事業を担う子会社のホームロジスティクスは、伊藤忠テクノソリューションズとの連携により、クラウドサービス「Mobile Asset Management Service」を宅配サービス基盤として採用しましたが、これは、6月23日に公開した新しいECサイトでも活用し、ニトリグループのオムニチャネル戦略を物流面から支援することになります。物流分野では人材不足が大きな課題となっており、効率化が求められています。効率化できれば、お客様を待たせることがなくなるなど、サービスレベルがあがりますし、コスト削減につながれば、売価を抑えられます。
――― 振り返ってみますと、ニトリのオムニチャネルへの取り組みは他社に比べて遅れているという感じを受けなくもありませんが
ご存知かもしれませんが、先日も、新たなECサイトの公開日が延期になり、お客様へご迷惑をおかけしてしましました。正直なことをいいますと、やりたいことに追いついていない状態です。将来のことを考えると、IT分野の人材をもっと増やし、組織も強化しなければいけないと感じています。ネット通販の分野では遅れているという指摘は確かですが、これまでは物流の強化をはじめ、まず優先してやらなくてはならないことへの投資を進めてきました。配送体制の強化や、大規模な物流拠点の設置計画など足腰を強化してきたことで、今後、"ニトリならではのオムニチャネル" を加速できる体制は整ってきたと言えます。
また、弊社では、店舗で購入していただいたお客様を対象にニトリメンバーズカードを発行しており、2015年7月時点、発行枚数は2,400万枚に達しています。現在では、スマートフォンアプリも提供しており、ニトリメンバーズカードとのデータ連携のほか、店舗検索や店舗詳細情報、新着ニュースなどの情報提供、ネットショップの利用もできるようになっています。
6月23日にオープンした新しいECサイトでも、今年秋をめどに、ニトリメンバーズカードとのデータ連携を行う予定です。これらの取り組みによりお客様は、ネットでの購入も実店舗での購入も履歴をまとめて見られるようになります。弊社としても、このデータを活用し、いつも購入していただいているお客様へのサービス向上はもちろんですが、しばらくニトリの商品を購入していないお客様に対しても、なぜ購入しなくなったのかなど分析していきたいですね。
元々、ニトリメンバーズカードを発行した目的の1つは、アフターサービスの強化だったのです。たとえば組立式の家具の場合、しばらく経つとネジが緩むといったことが起こります。これを放置しておくと家具がぐらつくといった問題が発生しますから、購入履歴のあるお客様に対し、定期的な点検を促したり、その方法をお知らせするなどの活用ができると考えました。購入履歴と紐づけることで、アフターサービスの強化を実現し、利便性だけでなく安心も提供できると思っています。
――― 現時点で、オムニチャネル化への取り組みは、その達成度合いとして何点ぐらいになりますか
ニトリグループでは、2032年までに実店舗を3,000店へ拡大することを目指しています。そのなかで、会長の似鳥昭雄は「現時点の姿は30点」だと表現しています。
オムニチャネルについてもまだまだやりたいことがありますし、できることもある。たとえば、すぐに商品が欲しいというお客様に対して、どれほど対応できているのか。まだまだお届けまでに時間がかかっていますし、改善点もある。時間指定サービスの強化や、品揃えの問題など、お客様にとっては、まだまだ不便なところもあるといえます。ECサイトを訪れたが買わなかった、期待したものがなかったということもあるでしょう。まだまだ進化させなくてはなりません。
こういったことを考慮し、オムニチャネルについて自己採点すると、やはり、まだ30点程度なのではないでしょうか。さまざまなサービスを提供し、それを利用していただくことで「ニトリ良くなったね。便利になったね」と言われることがうれしい。そして、その結果が、お客様数の増加や購入をしていただいた商品数の増加ということにつながると信じています。