薄膜太陽電池
imecの薄膜太陽光発電研究グループ・リーダーのTom Aernouts氏(図7)は「imecではさまざまな目的に対処するため、多様なタイプの太陽光発電(図8)の研究を行っている。特にフレキシブル有機薄膜太陽電池(OPV)開発に力をいれている」と述べた。imecでは有効面積156cm2のOPVパネルで変換効率5.3%を得ている(図9)。
これとは別に、最近、薄膜ペロブスカイト太陽光発電モジュール(アパーチャ―エリア16cm2)で11.9%%と言う記録的な変換効率を達成した(図10)。Aernouts氏は「シリコン太陽電池の変換効率向上のために、imecはペロブスカイト電池のシリコン太陽電池セルへのスタックも開発している。ペロブスカイトセルは、シリコンが吸収できない光を捉え、30%を超える変換効率を夢ではない」と述べた。
図8 さまざまな太陽電池の学会レベルでの記録的変換効率の推移。薄膜ぺロブスカイト太陽電池の変換効率の急上昇に注目 |
図9 OPVパネル(有効面156cm2で変換効率5.3%) |
図10 薄膜ペロブスカイト太陽光光発電モジュール(アパーチャ―エリア16cm2)のVI特性と変換効率 |
著者註:ぺロブスカイト太陽電池の公認の世界最高効率はKRICT(韓国)の20.1%(面積は0.1cm2)だが、11.9%は実用的な16cm2のサイズとしては業界最高感度であると言う(imecが2015年7月13日付で発表したニュースリリースによる)。ペロブスカイトは高光吸収係数、高電圧、長キャリア拡散長、塗布・低温成膜で安価な製造コストといった多くの特徴があり、太陽光発電分野で今最も注目されている材料である。当初は色素増感太陽電池(DSC)の増感剤として提案されたが、近年はPV材料として注目されており、世界規模で転換効率向上競争が激化しており、効率は急上昇中だ(図8)。
Mityashin氏は講演の最後に「imecとHolst Centreは、薄膜製造装置・材料・部品メーカー、システム・インテグレーター、製造委託先のファウンドリ、および薄膜デバイスのエンドユーザーである参加企業とオープン・イノベ―ションに基づく協業体制を敷いている」と、両者を中心に据えたエコシステム(図11)を紹介した。両者は、ともにオープンイノベーションを社是に掲げており、スマートリビングの実現目指して薄膜エレクトロニクスの実用化にますます勢いをつけて力が入りそうだ。