LAMSの分類 - 「集団型×閉鎖型×匿名型」が現代の特徴

Look at me 症候群(LAMS)の症状は個人が本来もっている性格や環境によって大きく異なり、それによって対応法も異なる。柿木教授は3つの基準による分類を行い、その組み合わせによって8種類に分類されるとしている。

  1. 「個人型」と「集団型」
  2. 「開放型」と「閉鎖型(抑うつ型)」
  3. 「自己顕示型」と「匿名型」

1の「個人型」と「集団型」について。個人ではLAMSの強い欲求をもっていても、それを素直に出すことができないが、集団になると急に強烈に自己顕示する場合がある。それを集団型と分類したという。たとえば暴走族はその典型であり、集団で異常な行動をするが、1人になるとおとなしい無口な青年だったりする。

仲間同士で飲食店で裸になった写真を投稿するような行為は「集団型×開放型×自己顕示型」。いわゆる「目立ちたがり」であり、自己顕示欲を素直に外部に発散するタイプである。「こういうタイプは周囲に迷惑をかけない限り、放置しておいて構わない」(柿木教授)。ただし犯罪的な行為に走る場合は、司直による対応と同時に医療専門家による精神鑑定が必要となる。

2と3はやや重複するが、3の自己顕示型と匿名型をあえて独立した分類にしたのは、SNSの急速な普及が大きな理由だという。日記もつけなかった人がマメに文章を書き、おとなしかったはずの人が積極的に自分の顔や私生活をSNSで公開している。そして「いいね!」の数やフォロワーの反応を絶えず気にする。こういうタイプが「自己顕示型」だと。

柿木教授はむしろ匿名型のLAMSが増えていることを危惧する。匿名性を利用した陰湿な批判や攻撃によって自己表現する人たち。これも「私に気づいて」という欲求がゆがんだ形になって表れたと考えられるそうだ。

「匿名型のLAMSは状況の変化によって、突然、自己顕示型となって異常行動に出る可能性がある。自己顕示型と匿名型は表裏一体であり、匿名型は基本的には自己顕示型のゆがんだ表現の形」というのが柿木教授の考えだ。

匿名型の多くは個人型であるが、ある特定の個人や集団に対して、SNSで集中的に非難するような場合は集団型となる。「集団型×閉鎖型×匿名型はまさに現代が生んだLAMSと言わざるを得ない」

ではどう対処すべきなのか。「個人型×閉鎖型×匿名型」タイプでは、目立たない子がひそかにリストカットなどの自傷行為に走る場合があるが、そのようなタイプこそ典型的なLAMSと考えられ、専門家によるセラピーが必須と柿木教授は考える。精神神経疾患でないことを確認しなければならないが、多くの場合そうではないという。

基本的にはまず話をよく聞き、精神疾患でないならばそのことを明言したうえで、LAMSとは何かを丁寧に説明する。自分の基本的な問題が強烈な、あるいはいびつなLAMSであることを自覚してもらうことからすべてが始まると柿木教授は考えている。

「心の問題に起因するさまざまな症状や言動は、本人が各自の問題を把握するところから始まります。気づいた方は回復や自立が早い。その過程において、LAMSという新しい切り口からの診断と治療アプローチを試みるのは十分に検討する価値があると考えられます」

LAMSの場合、幼少期からの家族を含む環境要因が大きな要因の1つと考えられるそうだ。家族の問題は微妙であり個人差が大きいが「たとえば兄弟が多い場合などは、両親はわがままな子、自己主張の強い子よりも、手のかからない子、おとなしい子にこそ注意を払ってほしい」という。「『私を見て』という気持ちを周囲に上手に伝えられない子が一番危ない。そういう子が急変した時はLAMSを思い出してほしい。思い当たる節があれば子供に対する接し方も変わってくるかもしれない」と指摘する。