デジタル図面への書き込みや写真リンクで業務を大幅に効率化
図面のデジタル化にかかわる課題を解決するだけでなく、利便性も追求している。特に紙図面から転換することで便利になるのは、情報の共有と報告書の作成だろう。
情報共有は、図面に書き込んだものの共有という形で行える。指やタッチペンを使って手書き文字を書き込めるだけでなく、円や矩形を描いての塗りつぶしや、テキストの入力といった図面への修正やコメントに必要な機能が一通り揃っている。
「検査・点検業務での利用を想定し日付とチェックマークを1タップで付けられる機能もあります。しかも1つのデジタル図面を複数のタブレット端末にダウンロードし、複数人で1フロア内を分担検査した後に、全員のチェック結果を統合することも可能です」と田中氏。
そのほかにも手書き文字を書き込んだり円や矩形を描く・塗りつぶす、といった図面への加筆修正に必要な機能が一通り揃っているのだ。また、書き込みはリアルタイムで共有する必要はなく、後からアップロードすれば良いので地下や海上などの劣悪な通信環境下でも利用できる。また、書き込み1つずつにも誰が行なったものなのかの情報が付属するため、作業者を明確にしたい時にも便利だ。
図面を修正しアップロードする際に、共有しているユーザーへ更新情報をメールで通知する機能も用意されている。「図面そのものをメール添付することはできませんが、修正された図面を急いで確認して欲しい、という利用シーンを想定し、高いセキュリティを保ちながらもっと便利に簡単に、ということを追求しました」と田中氏は語る。
このセキュリティを確保しつつより便利にしたいという考えは、報告書作成機能にも反映されている。図面に現場写真を添付した報告書を作成する時、従来はデジタルカメラで撮影した現場写真を帰社後により分け、コメントを追記して整理する必要があった。しかし「TerioCloud」ではタブレット内蔵のカメラで撮影した現場写真を、その場で図面にリンクできるだけでなく、その写真に対しての書き込みも可能だ。更に、その現場写真を一覧として取り出し、撮影日時などを自動反映させた形で報告書化できるのだ。
「作業者の意見を反映した機能として、写真に書き込んだメモ情報の表示・非表示を選択できようにしました。現場から帰社した後、数時間かかっていた編集作業がわずか数分で完了できるようになった!とお客様からはお褒めの言葉をいただくことも多いです。今後はカスタマイズした報告書フォーマットのご要望にもお応えできるようにして行きたいですね」と田中氏は語った。
点検業務の効率化や標準化に貢献
「TerioCloud」は大判デジタル図面をスムーズに閲覧し、書き込み等を共有できるソリューションだ。その中で、主に製造業のお客様を担当しているのが、セイコーアイ・インフォテックのデジタル図面営業課リーダーの茂呂勝美氏だ。
「あるお客様では、プラントのメンテナンスのような非常に大きな建造物に対する検査業務時に、A2サイズの紙図面を200~400枚綴じたファイルを持ち歩いていたのですが、これがタブレット1台に置き換えられた事例があります」と茂呂氏。製造業以外でも、建造物や電気・ガスなどを点検するために大判紙図面を大量に持ち歩く必要があるメンテナンスサービス業界でも「TerioCloud」が採用されているそうだ。
また、そうした検査業務の標準化や効率化にも貢献している。「部品の入荷チェック等の作業にあたって、確認すべきポイントなどを図面にあらかじめ書き込んでおくことで、個人差によるチェック品質のばらつきを防止できるだけでなく、転記ミスなどによる事故もなくなり作業効率が大きく向上しました。一冊しかない紙図面ファイルを誰かが持ち出している場合、その業務が進められない、というような問題も「TerioCloud」を利用していただければ問題を解決できるケースも多いのではないか」と茂呂氏は現場での実例を交えて熱く語る。
セイコーアイ・インフォテックは長年に渡り大判プリンターメーカーとして、大判図面に対するノウハウを培ってきた。現場で必要とされている機能だけでなく「現場で働く作業者の感覚」をよく知っている。そんな同社だからこそ、建設業ではクラウドを活用したデジタル図面利用はだいぶ進んできているが、製造業ではなかなかクラウドの利用が進んでいない状況を鑑み、オンプレミスでの利用も可能にした。このあたりは、メリットのゴリ押しをしがちなベンダとひと味違うところだ。共生してきた業界に寄り添う姿勢がかいまみられる。
「iPad登場時から期待されてきたデジタル図面の活用ですが、Windowsタブレットのバリエーションが増えたことで活用の幅も広がりました。大判図面が原寸表示できる大型タッチディスプレイと組み合わせて会議等で利用する方法もあれば、ポケットから取り出したiPhoneで図面を確認することもできます。iOS向けにもWindows向けにも同じインターフェイスで利用できるアプリを無償提供していますから、使いやすいデバイスを現場で使っていただけます」と茂呂氏。
「TerioCloud」はデータの保存容量とアカウント数で課金する方式を採用しており、アプリ自体は無償配布されている。また、クラウド版を3カ月無料で利用できる体験サービスも提供中だ。
DMSでは実際の使い心地を体験可能!
6月24日から開催されるDMS東京では、セイコーアイ・インフォテックのブースで「TerioCloud」の展示が行なわれる予定だ。実際にタブレットで図面を表示したスムーズさなどが体験できる。図面のデジタル化を検討している企業や、デジタル図面の安全で便利な活用に興味を持っている企業にはぜひ触ってみて欲しい。