今回OIHで行われたピッチイベントは、KDDI∞Laboとのコラボレーションで行われたもの。KDDIは、インキュベーションプログラムが8期を迎えているが、地方のスタートアップ支援団体との連携を発表しており、今回の取り組みがその第1弾だ。このピッチイベントで優秀賞に選ばれたチームは、∞ラボの8期デモデイに登壇する権利を得られ、KDDIと共にスタートアップの支援を行うパートナー連合プログラム参加企業とのビジネスマッチングも受けられる。
ラボ長を務める江幡氏は、今回の地方連携について「地方のスタートアップをサポートできるように、もっと表舞台に出てこられる場を、地方連携を通して作っていきたい」とその目標を語る。
足かけ4年近くインキュベーションプログラムを続けている江幡氏らだが、これまでの経験から地方に眠る才能との交流をもっと進めていきたいという思いがあったのだという。実際に動き出したのは今年の頭からだが、夏のデモデイに向けて今回のピッチイベント実現にこぎつけた。
「熱い想いを持つOIHの人と一緒にやることで、何か新しいことをしたいと考えた」(江幡氏)
江幡氏がたびたび強調した点は「大阪を地方とは思っていない」ということ。この後、優秀賞を獲得したチームを紹介するが、いずれも明確な理念と目標、どのようにスケールしていくかという起業家らしいマインドセットを持ちあわせており、東京で行われている各種ベンチャー向けイベントの登壇者に引けをとらない雰囲気を持っていた。大阪一、日本一を目指すだけでなく、世界を土壌とする戦いを見据えている彼らは、地方の課題解決ではなく、都市圏の生活者が「世の中を変えたい」と思い抱いている点で、地方とは異なっているというわけだ。
このように書くと地方軽視にも見えるかもしれないが、地方連携には多様な目的が含まれている。先にも江幡氏のコメントで触れた「地方のスタートアップを表舞台に」という点でもわかるように、地方から世界を目指せるマンパワーが潜んでいると思うからこそ、地方連携という取り組みを行っている。その上で、江幡氏は「地場の課題、ちょっとした課題に焦点を合わせたアイデアが地方にはまだまだあると思う」と話している。つまり、少子高齢化や都市圏への人口集中から"疲弊している"とされる地方の再興につながるような"ちょっとしたアイデア"を掘り起こすことで、その地域だけでなく、日本国中の地方の活性化につなげたい。そんな意図が江幡氏のコメントから読み取れる。
「例えば地方では福岡県などがスタートアップで湧いていますが、ほかにも地方で努力している場所は多数存在する。でも、地方だけでは支援者の数が圧倒的に足りない。その一方で、東京には支援者がいるけど、東京では思い浮かばないようなアイデアが地方にはある。
いくつかこの地方連携を進めていこうという話になっている。ラボでも8期で養蜂へのIoT導入を行うチームが広島から飛び出しているし、地元で話題になっていると聞く。こうした金銭と人員サポートを東京から行い、地方の地場にいい形で還元したいんです」(江幡氏)
さくらインターネットの田中氏が起業家に送る言葉とは?
ピッチイベントには大阪市に本社を置く、さくらインターネットの代表取締役社長 田中 邦裕氏らが審査員として参加。田中氏は1996年に学生起業で同社を設立したことで有名だが、今回のピッチイベントでも自分の後輩となる企業を目指す強者達を前に先輩から熱いアドバイスを送った。
「ビジネスプランを美しく語るのではなく、熱量を見せてほしい。情報は地方でも手に入れると言われているが、こうしたイベントで得られるものは"熱量"だ。大阪でこうしたイベントが行われることで、全体の"熱量"が高まればいいと思うし、ほかの地方でも同じような場がどんどんできるようにするのが私の仕事だと思っている。
大事なことは、『熱量を与えられるように頑張る』ということ。だらっと競争していてはダメだ。熱量を与えて、さらに多くの熱量をもらって帰れるようにしてほしい」(田中氏)