三重富士通と資本提携して日本市場での増収狙う

最先端プロセス開発担当VPのT. R. Yew氏は、今後の微細化の戦略を説明した(図6)。現在、28nmプロセスを用いたHLP(High- Performance Low-Power)およびHPM(High-Performance Mobile)を量産しているが、ライバルをキャッチアップするため、20nmはスキップして、現在、14nmプロセスを開発中である。UMCにとっては初のFinFET構造(図7)である。もともと米IBMからライセンスされた基礎技術を基に、社内で改良を重ねており、最初の顧客に向けたテープアウトは今年末、顧客へのデザインキットの提供開始は来年第1四半期に行う方向で全力を挙げて開発中。14nmデバイスは、同社の28nm製品に比べて、性能が5割増し、消費電力が6割減を期待できると言う。

図6 すでに10nmプロセスも視野に入れたUMCの先端技術ロードマップ

図7 14nm FinFET構造の概略図

10nmおよびそれ以降のプロセスについては、先端研究開発エンジニアをIBM半導体研究開発センター(米国ニューヨーク州Albany市ニューヨーク州立大学(SUNY)キャンパス内)に派遣して、IBMと協業開発体制を敷いている。現状では、生産量でも先端プロセスでもTSMCに大きく差をつけられてしまっているが、長期戦でなんとかキャッチアップしようとIBMの英知を活用しようという作戦のようだ。

Yew氏によると、今後さらに微細化を続けるためには、多重パターニングとDFM(Design for Manufacturing:製造段階で見いだされた設計起因の問題を迅速に設計へフィードバックし設計側で対応策を盛り込むことで製造を容易にする手法)の徹底活用が鍵を握るとした。

またUMCは、ウェハプロセスに留まらずIC設計、IP提供、LSI検査(図8)、パッケージ実装なども含めたトータルサービスを提供する高付加価値タ―ンキーサービスを目指している。 

図8 UMCが所有し、検査サービスを提供できるテスターとその対象

さらに富士通とUMCの合弁企業となった三重富士通セミコンダクター(図9、資本金75億円、従業員850名)の代表取締役社長と務める八木春良氏(図10)もUMCのパートナーとして「(UMCが)日本に根付いたお客様サービスのために(Partnership with UMC and its values for Customers)」と題して講演した。

図9 三重富士通セミコンダクター(MIFS)の全景。ファブB1(左:2005年稼働開始、床面積3000m2)とファブB2(右:2007年稼働開始、80000m2)

図10 三重富士通セミコンダクターの八木春良社長

同社は2014年12月に富士通セミコンダクターの100%出資のファウンドリとして発足したが2015年3月にUMCの資本参加を受けて、現在の持ち株比率は富士通90.7% UMC9.3%となっている。かつて三重工場は、TSMCへ売却のうわさがあったが、それが立ち消えとなり、その後、UMCの資本をうけいれることになった。

富士通は、以前 65/55nmプロセスをUMCシンガポールの8インチファブ(Fab12i)へ技術移管した経緯があり、UMCとはかねてより技術交流があった。 2015年3月の両社の資本提携の結果、富士通はUMCから40nmプロセスのライセンスの供与を受け、現在ファブB2(図8)に40nmプロセスラインを構築中である。一方、富士通側からUMCへはNVM(non volatile memory:不揮発性メモリ)およびDDC(Deeply Depleted Channel:チャネルを深く空乏化させモバイル製品の消費電力を抑える技術)を供与している(図11)。

図11 UMCと富士通の相互半導体技術供与関係

富士通は,もともと自主開発してきた90/65/55nmプロセスに新たにUMCの40nmプロセスを加えて、生産規模を現状の3万5000枚/月(300mmウェハ換算)から4万枚に引き上げる計画である。本年度の売り上げは850~900億円をめざす。UMCが今度こそ日本に根づいた半導体受託サービスを行い成功するか否かは、三重富士通とのファウンドリとしての協業の成否に掛っているといえよう。

なお、2015年5月20日に発表された最新の世界半導体市場売上高ランキング(2015年第1四半期)(ファブレスやファウンドリを含む、米国調査会社IC Insights調べ)でUMCは 2桁成長で20位入りを果たした。ちなみに、2014年通年のランキングは21位だった。