車載やIoT関連での活用に期待が集まる日本市場

半導体ファウンドリ業界で、台湾TSMC、米国GLOBALFOUNDRIESに次いで世界3位に位置する台湾United Microelectronics Corporation(UMC) が5月27日に東京都内でテクノロジー・ワークショップを開催して、自社の技術開発状況や今後の展望について講演した(図1)。今後急成長が期待できるIoT向けや車載半導体ビジネスに特に力を入れていくことを強調したほか、2015年3月に資本参加した三重富士通セミコンダクターとの協業ついても紹介した。

図1 UMC Technology Workshopの会場風景

UMCの日本法人(UMC Japan) は、かつて日本(千葉県館山市)に半導体工場(旧NMBセミコンダクタを買収)を持っていたが、2012年8月に閉鎖して、同社は清算され、いったんは日本での事業活動を停止していた。かつては、日本初の300mmファブであるトレセンティテクノロジーを日立製作所と共同設立したこともあり、日本市場に相当力が入っていた。

2013年に、日本での営業拠点としてユー・エム・シー・ジャパングループをあらたに東京・秋葉原に設立し、ふたたび日本市場へ参入し、売り上げ拡大を目指している。

今回のワークショップでは、UMC Japan Group代表取締役社長の張仁治氏が最初に登壇し、「日本の半導体市場でファウンドリの利用率が上がってきており、UMCにとって追い風となっている。IDMのような垂直統合は、少品種大量生産に向いているが、多品種少量生産には適した構造ではない。一方、水平分業(ファブレスやファウンドリ)は、多品種少量生産に向いているが、成功するためには製品・設計・製造・組立間の協業が重要で、これらの工程前後の協力、そしてエコシステムの構築が必須である。UMCは、U(You=顧客)とM(Me=当社)がCollaborate(協業)する手法に長けた会社でありたい」と述べた。

次に、UMCのCEOであるP.W.Yen氏(図2)が「IoTファウンドリ―」と題して講演し、「2020年には500億個ものモノがインターネットに接続される。半導体のテクノロジードライバーもPCからモバイル、そしてIoT関連へと変化しつつある。そんな中、IoT時代にふさわしいファウンドリを目指す」と宣言した。そして「I」、「O」および「T」を頭文字とする、次のような3つのスローガンを掲げた。

図2 講演するUMC CEOのP. W. Yen 氏

  1. Innovation for Best C/P+(性能あたりのコストをさらに下げて最小化するイノベーション)
  2. Operation with Maximum Flexibility(柔軟性を最大限生かした事業展開)
  3. Technology Leading in Speciality(専門領域での技術の主導性)

Yen CEOは、さらに、車載半導体ビジネスについて強調し、次のように述べた。「これからの車に搭載されるシリコンコンテンツは急激に増加していく。このため、車載ICセクターは他の半導体セグメントと比較して最高のCAGR(年平均成長率)を達成するのは確実だ。UMCには車載ICサプライヤーとしての素晴らしい歴史があり、業務継続システム、製造工程での「欠陥ゼロ」手法を組み込んだ包括的な車載テクノロジー・プラットフォーム「UMC Auto」の提供により、さらに多くのお客様に車載IC市場でのビジネスチャンスをつかんでいただきたい」

UMC Auto(図3)は、5月26日に台湾本社から発表されたばかりの、車載IC設計企業向けサービスパッケージで、0.5μmから28nmのノードに及ぶAEC-Q100に準拠した、幅広く包括的な車載テクノロジ・プラットフォームである。これは、厳しい審査を経て認証されたISO TS-16949自動車品質基準を有するUMCの全工場における堅牢な製造プロセスにサポートされている。自動車産業のサプライチェーンの進化を加速させるために、認証済みの設計モデル、IP、UMC Auto プラットフォームに準拠したファウンドリ設計キットを開発し、チップ設計者が「モノのインターネット」(IoT)などの新たな市場機会を捉え、車載アプリケーションにおけるセンサの使用を促進する手助けをする。

図3 車載IC設計を支援する包括的な車載テクノロジ・プラットフォーム「UMC AUTO」により、さらに車載半導体の製造受託をねらう (これより以下の図はUMC提供)

車載半導体について、マーケティング部門の技術マネージャーT. T. Yanは、2018年までの半導体の平均成長率は年率5.5%と予想される中で、車載半導体の伸びは10.8%と最も高い伸びが期待できる分野なので、UMCとしても力を入れている。車載用半導体製造委託品数が2013年以降、以前の2倍のペースで増えている(図4)」と述べた。同社の車載用ウェハプロセスは、車載OEM8社に採用され、2010年以降すでに70種類意表の車載製品をてがけ、そのために24万枚以上のウェハ処理を行った実績を強調した(図5)。

図4 UMCにおける車載半導体デバイスのテープアウト数の推移。2013年から成長率が倍増している

図5 UMCにおける車載半導体分野の業績

そして、クルマ仕様の高温動作保証や、車内外を無線でつなげるためのRFプロセス、そしてクルマ独特の高品質なゼロ欠陥プロセスなど、車載プロセスの工程管理も含めた総合パッケージパッケージ、UMC Autoによって、車載アプリケーション向けチップを設計するIC企業の設計を支援することを強調した、