35万人が利用し、月間ダウンロード数はなんと10万件以上

2D CADの時代には、各設計者に各メーカーがそれぞれデータを送っていた。当時は、データのファイルフォーマットがほぼ統一されており、設計者がサイズ調節などを自分で行うことが可能であったため部品サプライヤ側が全データを用意する必要もなかったからだ。しかし、これが3次元になった途端、ハードルがあがった。機密性の高い3D CADデータをおいそれと提供することはできず、提供用に別に用意する必要が発生。さらには2Dのような統一ファイルフォーマットもなく、使用現場ごとに異なる状態。そして設計者によるサイズ変更も現実的ではなくなった。かくしてオファーのたびに、気の遠くなるようなデータを用意する事態となり、このサービスが必要になった。

その有用性は、利用者数に現れており、現在35万人を超える利用者がおり、企業数では年間約2万社に利用されている。さらに毎月約4000人程度の新規登録で増え続け、3D CADデータの月間ダウンロード件数は半年で100万件を超える量まで伸びている。これは、ここ5年間でも6倍の伸びと言う。少なからず、日本の設計環境の3次元化への移行、スピードアップにも貢献しているといっていいだろう。

一方、現在、加盟している部品メーカーは70社を数え、それぞれが各ジャンルのトップ企業だ。メーカーはCADENASに対し、定額のサーバー使用料などの費用を支払っているが、その関係性は良好。普段は競合している部品メーカー同士も、ここでは仲良く並んでいる。雑誌広告などでの引き合い獲得が難しくなっているなか、それと比較にならない件数の"ユーザー情報"(ダウンロードしたユーザーの個人情報)を取得できるのも、大きな魅力の一つだ。

ズラリと並んだ「PARTcommunity」スポンサー各社。壮観だ

なぜ国内独占が可能なのか

しかし、こういったメリットの大きい出会いを創出できるマッチングサービスでは、つぎつぎにプレイヤーが現れ、たちまちレッドオーシャンと化すのが世の習いだが、なぜ同様のサービスを行っている会社は国内にはなく、世界的にみてもあと1、2社類似サービスがある程度という状態なのか。時代に先行できていたという側面もあるが、実はデータをストックする技術にも秘密がある。

単に、億を超える一つひとつの3D CADデータをサーバーに上げている訳ではない。部品(型番)を選択するコンフィグレータと、選択したサイズやオプション構成・組合せに合わせて、その場で、3次元モデルを生成する『パラメトリック技術』という"プログラム"の様な仕組みがあり、必要に応じて3D CADデータを生成しているのだ。つまり、この仕組みにより、メーカー各社の膨大なファイルが、サービス上では使用者が必要なデータを生成できるプログラムに変わるわけだ。

キャデナス社のテクノロジーのキモ:『コンフィグレータ』と『パラメトリック技術』により生成された複雑な部品

またメーカー加盟時には、各社で登録したい製品データを用意する必要がある。しかし、他案件のために稼働している自社の設計部隊に協力をあおぐことは難しいケースが多い。CADENASは、100名以上のデータ登録部隊を有しているため、有償とはいえ、これをフォローすることができるのも大きい。実際、大半の企業が登録時に、モデリングの請負を依頼してくるという。