ステージデモその1 - Factory

まず最初はFactoryの紹介。DevConではピンポン玉を浮かせるデモが行われた(というか、あのデモも引き続き健在である)が、今回は新たに、ラインを流れるピンポン玉の色を画像認識で判断し、それに応じてモーター駆動のアームで選別する、というデモが登場した(Photo05)。

Photo05:ピンポン玉は4色(実は+αがあるが、それはまた別の記事で)で、中央のコンベアを時計回りに移動し、それぞれのセンサが流れてくる色を判別してアームを駆動する形。R-IN+RXの構成とRZ/T1の構成の2つが、それぞれH/W RealtimeとS/W Realtimeということで4つ並んでいる

さて、ステージの説明は昨今の工場のトレンドにまず触れ(Photo06)、これを実現するための第一歩として工場を繋いでゆく中での問題を紹介、そこでルネサスの提唱する「自律するIoT」で、スレーブ機器のインテリジェンス性を高めることでデータ量そのものを減らそう、という解が示された(Photo08)。

Photo06:表現とか実装方法は若干違うこともあるが、目指すところは同じで、柔軟性を持たせることで多品種少量のラインを効果的に構築するのにITを使おうという話

Photo07:何しろ台数が多いから、2つ目の問題もセグメントを分ければ解決するという話ではないし、セグメントを分けても1つ目の問題は解決しない

Photo08:単純化すれば、でもPLCやらCNCにやらせるのでなく、スレーブが自分で処理すれば、制御のトラフィックが不要になるという話である(実際はもう少し複雑であるが)

ここでキーになるのがR-INエンジンで、リアルタイムOSやネットワークスタックの処理を一部ハードウェアでオフロードするものである(Photo09)。これにより、CPUの負荷を減らすというか、空き時間を増やす事ができるので、その空き時間を使ってインテリジェンス性を高められる、というシナリオだ(Photo10)。

Photo09:このR-INエンジンがピンポン玉を浮かすデモでも目玉だったわけだが、今回もやはりこれが主眼になった

Photo10:前回のデモでも今回のデモでも、サンプリング頻度を高めると言う形で負荷を増やすことで、OS+揺らぎマージンの時間が足りなくなった時の挙動を示すという形でデモが行われた

デモそのものは共通のネットワークの下にリモートI/Oを2台ぶら下げ(Photo11)、このリモートI/Oによる画像認識の結果を受けてモータを駆動、ハンマーでボールを叩くというものだ(Photo12)。

Photo11:どちらもR-IN32M3だが、片方はR-INエンジンを使い、もう片方は使わない。Photo05で言えば位置的には写真の右脇になるのだが、ここには映っていない

Photo12:こちらはPhoto05ではそれぞれのハンマーの上に並んでいる

さて、センシング速度が1000μs程度だと、R-INエンジンを使わなくてもCPU負荷率はそれほど高く無い(Photo13)。ではセンシング速度を100μsに向けてどんどん引き上げるとどうなるか(Photo14)というのがこちら(Photo15)。最終的に100μsまで速度を引き上げる前に破綻してしまい、これ以上の正常動作が不可能になってしまった。

Photo13:R-INエンジンなしでCPU負荷は10%程度、R-INエンジンありだと2%程度の負荷となる。この見せ方は以前のピンポン玉を浮かすデモと同じ

Photo14:なぜセンシング速度を上げるか、と言えば検索精度を上げるためである

Photo15:手ぶれている画像で恐縮であるが、R-INエンジンを使うとまだ負荷率が半分程度なのが、R-INエンジンなしだとすでに100%の負荷率になってしまっているのが判る

自律するIoTのためにはスレーブ機器側でなるべく多くの処理を行う必要があるが価格面や消費電力を考えるとそうそう高性能なプロセッサは使えない。こうしたせめぎあいに対する解の1つがR-INエンジンであり、今年1月からサンプル出荷を開始したRZ/T1はまさしくこうした制御に最適な製品(Photo16)、と締めくくってFactoryのデモを終わった。

Photo16:RZ/T1に関してはこの後説明するが、なかなか独特なデモも別に用意されていた