京都市が「歩いて楽しい街中エリア」として定めた、南北を四条通~御池通、東西を河原町通~烏丸通で囲まれたエリアについては、「今回の動向調査による観光客の移動経路および特定スポットでの滞留時間は、このエリアが予想に反して歩行者を引き付けていないことを示しています。四条通の両端である烏丸と河原町を訪れた人は、四条通を移動してから別のスポットへ移動していると思っていたのですが、実はこの動線は分断されていました」と小出氏は明かす。

観光客に対する「歩いて楽しい街中エリア」のアピール不足に加え、主要な社寺仏閣エリア、知名度の高い祇園周辺、移動の起点となる京都駅周辺などから遠いことも観光客の滞留時間が少ない要因と推察される。

休日の観光客と思われる動線。烏丸を起点に、二条城や祇園周辺での滞留時間が長いのに対して四条通の滞留時間は短い(矢印が移動経路、四角の中の数字が滞留時間(分)、以下同)

同じく休日の観光客と思われる動線。京都駅を起点に二条城、四条河原町、清水寺などを巡っているが、四条通には立ち寄らない

「休日の観光客比率が低かったのは意外でした。通行量カウンターでは平日より休日の通行量が20~30%増加していましたが、ビッグデータ分析によればそのうち観光客の増加分はわずか数%でした。休日増加分の大半はデパート等を利用する買物客と推察できますが、もっと観光客にも休日に四条通に来訪してもらう施策が必要です」(小出氏)

観光資源の少ない四条通にも祇園祭関連のスポットなど、まだまだアピールできる余地はある。また四条通より一本北の錦小路通には市場があり、観光客の通りが多いので、ここから四条通へと流れる動線を開発することも考えられると小出氏は語る。また他の商店街とのつながりについては、近隣の地区よりも祇園周辺との連携が強いことをデータが示していた。

地元買物客の取り込みにもビッグデータを活用

京都市内に在住する買物客を誘導することも四条繁栄会にとっては重要だ。四条通を含む下京区および隣接区から四条通への訪問率を比較すると、下京区の30.2%を筆頭に東接する東山区が21.9%、北接する中京区が19.4%と続く。

「最近の中京区の人口増加率を考えると、中京区民へのアピールは今後の課題と考えます。それ以外にも、居住人口と比較して伏見区、右京区、左京区からの流入率が低い傾向にあり、京都市内の訪問者が6割を占める四条通にとって、市内からの流入率アップは必要不可欠と思われます。休日のデータでは、新京極通や寺町通、河原町周辺から四条通に流入される方は増加しますが、逆に京都駅や五条方面、烏丸周辺から四条通に流入される方が減少していることは今後の検証課題と思われます」(小出氏)

買物客の動向を見ると、滞留時間の長いのは四条通の両端である烏丸および河原町周辺に集中しており、両スポットの移動に四条通を利用していないケースも見られる。休日の動線では、四条通と交わる南北の通りに点在するショップに買物客が流れ、四条通を利用しないケースもあった。

四条通での滞留時間は河原町周辺と烏丸周辺に集中している

休日は四条通を利用せず南北に移動してから東西へ移動していることが分かる