各社ならではの取り組み
リンクアンドモチベーションでは、ウェルネス経営の行動指針として「健康管理」を掲げ、その推進を専門に行う部署である「ウェルネスマネジメントユニット」においてCWOの指示のもと、取り組みを推進しているという。
同社の代表取締役 小笹芳央氏は現在の日本市場の変化について次のように説明した。
「日本のエンゲル係数は年々低下している。これは、『食べるために働く』という時代から、さまざまなワークモチベーションを持った時代に変化したと考えられる。企業はこの多様化する従業員のワークモチベーションを束ねていく必要がある。また、商品市場も変化しており、日本のGDPに占める第三次産業の割合が年々増加している。モチベーションやホスピタリティ、クリエーティブなど人的資源にまつわる部分が競争優位となってきている。これは、競争優位の源泉が「事業戦略」から「人事戦略」へと変化しているといえるだろう。また、企業と個人の関係にも変化があり、従来の終身雇用と比べて、現在は多様な雇用形態が生まれ、個人は自分のキャリア形成を考えて、働く環境(労働市場)を選ぶようになった。企業は商品市場に加えて、労働市場への適応が最重要課題である。そのためには、従業員の心身の健康を調えることが重要となってくる」
日本交通では、タクシーとハイヤーの両部門にそれぞれCWOを設置し、まずは両部門の個人と組織の健康状態を把握することから実施しているという。
同社の代表取締役 川鍋一朗氏は、タクシー業界について「朝早くから夜遅くまで仕事をしているタクシー運転手は決して健康的な生活ではない」と語った。
「また、勤務中は一人で仕事をしているため、自己管理もしにくい状況である。常に持ち歩いているスマートフォンで提供しているFiNCのサービスであれば、取り組みやすいと考え、まずはタクシーとハイヤーの部門の運転手に取り組んでもらう予定だ。今後は、従業員・ドライバーの心と身体の健康予防の観点からも積極的に進めていく」(川鍋氏)
吉野家ホールディングスでは、 従業員が心身ともに健康であることが非常に重要であるという考えから、CWOを設置し、従業員の健康状態をこれまで以上にきめ細かく把握していくなど、グループ全体での取り組みを行っていく構えだ。
代表取締役の河村泰貴氏は同社が提供しているメニュについて、次のように語った。
「従来のコンセプトである『うまい、やすい、はやい』だけでは、現在の市場ニーズには合致しなくなってきている。これからは『健康』という観点を取り入れて、消費者に対してもアプローチしていきたい」
今後は、ウェルネス経営を掲げ、国内の吉野家を皮切りに、従業員にとどまらず、消費者の心と体を健康にするための生活習慣改善サポートも積極的に進めていくという。
そのほか記者会見では、ウェルネス経営を実現させるためのソリューション提供企業として、日本野菜ソムリエ協会、ウェルネスフロンティア、TABLE FOR TWOの3社も、ウェルネス経営に関して賛同を示した。
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今後、FiNC、日本交通、吉野家ホールディングス、リンクアンドモチベーションの4社は、「欠勤率・休職率・離職率などを減らす」といった対症療法的な施策ではなく、根本的な原因を特定して状況の悪化を防ぎ、優秀な人財に投資できる仕組みを構築することによって、企業の競争力を強化していく考えだ。
ウェルネス経営とその推進役となるCWO制度の導入により、従業員の健康を強く意識した経営スタイルへと変革する「ウェルネス経営宣言」を行った各社は、ウェルネス経営が世界の企業経営における常識になるよう共に力を合わせ推進していくという。