--HCPを推進するにあたっての優先課題は何か?--
Leukert氏: 優先課題を「チャンス」と言い換えると(笑)、われわれが積極的に進めていることは顧客とのCo-Innovationプログラムだ。これは、技術ソリューションにとどまらず、新しいビジネスモデルを考案するところまでを含む。
例えば、ドイツのエアコンプレッサー企業では、製品を販売するモデルから、製品を利用して生成した空気に対して料金を徴収する従量課金モデルに転身した。これにより、顧客の効果に対して売上を得るという双方にとってわかりやすい課金ができるようになっただけでなく、継続的なつながりが生まれたと聞いている。
このように、SAPは顧客や提携企業と一緒に新しいビジネスモデルを考えている。特に提携企業にとっては、SAPのアプリを自分たちの拡張の両方のプラットフォームとしてHCPを活用できる。提携企業が自社のソリューションを提供する際にHCPもセットになるので、われわれにしてみれば重要な間接販売チャネルとなる。われわれの社員が直接顧客に提供するだけでは、リーチの拡大を図ることができないので、重要なモデルとなる。
Co-Innovationモデルでは、このエアコンプレッサー企業のように、IoT(モノのインターネット)分野の事例が増えている。
--S/4 HANAではデータベースがHANAに限定される。ERPの革新に対しては顧客企業により温度差があるが、どのようにして変化の必要性を説いていくのか?--
Leukert氏: われわれはいかなる顧客に対しても自社のイノベーションを強制するようなことはしない。しかし、われわれの業界は急速に進化しており、イノベーションを取り入れることは競合と戦ううえで必須だ。
ドイツは産官学一体で「インダストリー4.0」という戦略の下、産業革命に取り組んでいるが、今は第4次産業革命に匹敵する興味深い時代だ。今回の産業革命の大きな特徴は、ビジネスの変革であり、データそのものが資産になるという点だ。これまで、ITはサポートの立場にあり、データをキャプチャしてエンドユーザーに戻していたにすぎない。だが、データを使えばビジネスを拡大することができるのだ。これは大きな違いであり、あらゆる業界がデータを使って新しいビジネスモデルを立てる必要がある。
われわれはこのような時代に向け、S/4 HANAをはじめとする製品を用意しているが、継続的にさまざまな業界の顧客と対話を続けている。幹部、戦略チーム、運用チームとさまざまなレベルで話をしているが、自社の可能性を理解してもらい、自分たちがしなければ他社がする――つまり、市場のポジションを失うリスクがあることを伝えている。Co-Innovationプログラムのように、戦略的に顧客と関わることができるのはわれわれには興味深いことだ。
--HANAの次のステップを教えてほしい?--
Leukert氏: 詳しくは伝えられないが、HANAの技術をあらゆるデバイスにもたらすことだ。
HANAは現在、分析などのビジネスアプリケーションを動かすプラットフォームだが、フットプリント(容量)が小さくなっており、今後はカメラ、タブレットなどのデバイスにもインストールして接続できる。さまざまなデバイスを結びつけるディストリビューション・ネットワークがあり、中央に制御センターとしてのHANAインスタンスがある。
このように、次はフットプリントを小さくして、小型デバイスにインストールできるようにしていく。
(このインタビューの翌日、SAPはIoT向けのHCPを発表している)