フクロウのように静かに飛べる飛行機を目指すFQUROH

aFJRと並んで、この日発表されたもうひとつのプロジェクトが「FQUROH」だ。FQUROHは「Flight demonstration of Quiet technology to Reduce noise from High-lift configurations」の頭文字から取られており、航空機から出る騒音を低減するための技術の飛行実証を目的としている。FQUROHはフクロウと発音するが、これは実際のフクロウが空を静かに飛ぶように進化してきた鳥なので、航空機の騒音低減というミッション目的と合致することから名付けられたそうだ。

航空機から発生する騒音はすさまじく、空港周辺に騒音対策を施したり、建築物の建設に制限が出たり、夜間の離発着を行わないようにしたり、あるいは航空会社が支払う着陸料に、騒音に応じたペナルティがあったりといった対処がなされてきている。

しかし、航空機による輸送はこれからも年5%ほどのペースで増えると予測されており、今後20年で2.6倍になり、離発着数も今の2倍になるという。それにより、騒音も平均で3dbほど増えることが予測されている。そこで航空機から出る騒音を、さらに減らしていく必要がある。

かつては、騒音の主原因はエンジンにあったため、バイパス比を増やすことで騒音を減らしてきた。しかし、数字の上では年々、確かに下がってはきているものの、いよいよバイパス比の改良だけでは追い付かなくなってきたのだという。

そこで、エンジン以外の部分から発生する騒音も減らしていかなければならない。騒音の原因として大きいのは、離着陸の際に主翼から展開させるフラップとスラット、そして着陸脚だという。これらは90から100dbほどの音を発生させる。

航空機の騒音源

だが、騒音の源となる空気の流れは、物理現象が複雑で予測するのが難しく、また巡航時は機体に収容する必要があるため、最適な形状にすることが難しいという課題があった。

FQUROHは2013年からプリプロジェクトとして進められており、これまで数値解析や風洞実験を通じて研究が行われてきた。そして見通しが立ったことで、実際の飛行機を使って実証することを目的とし、正式にプロジェクトとして立ち上げられたという。また日本はこの50年間、航空機を開発した経験が少ないため、航空機を飛行させて新しい技術の実証を行う、そのプロセスを確立することも目的とされている。

実証試験はまずJAXAが保有する「飛翔」を使って行われる。飛翔はJAXAが2011年に導入した実験用の航空機で、米国セスナ社のサイテーション・ソヴリンを改造した機体だ。試験では、飛翔のフラップ上面に騒音を抑制するための装置を装着し、また端の形状が丸められる。また着陸脚のタイヤとタイヤの間のブレーキ部に、穴の開いたフェアリングを装着するという。

そして2019年ごろには、三菱航空機のMRJを使った実証試験を行いたいとのことだ。

JAXAが保有する実験用航空機「飛翔」 (C)JAXA

MRJ (C)三菱航空機

試験にはJAXAの他、三菱航空機、川崎重工業航空宇宙カンパニー、住友精密工業が参画する。また大学や海外の研究機関との連携も図られるとのことだ。

登壇した川崎重工業航空宇宙カンパニーの葉山賢司氏は「これまで数値計算や風洞実験を行ってきたが、実証機を使った飛行試験はなかった。このFQUROHで実際に効果を確認でき、またその後物を造るという、「設計のループ」を初めて取り扱うことになる。世界的にもまだこの技術は実用化されていない。非常に期待している」と期待を語った。

また三菱航空機の中西邦夫氏は「現在開発しているMRJでは、環境に優しいこと、低騒音であることを売りにしているが、まだまだ低騒音化を進めていかないといけない。期待している」と語った。

最終的な数値目標については、FQUROHは各要素の実証を行う計画であるため、また既存の機体を改造する形でやるので、低騒音化には限度があるという。成功基準としては、各騒音源それぞれ2db程度下げることを目指すという。いずれ、本格的にこの技術を使った航空機を造ることがあれば、エンジン低騒音化などを含めると4db程度下げることを目指したいとのことだ。

参考

・http://www.aero.jaxa.jp/research/ecat/afjr/
・http://www.aero.jaxa.jp/research/ecat/fquroh/
・http://www.pw.utc.com/V2500_Engine