(8)マインドコントロール型ロボットスーツ

対麻痺のあるJuliano Pinto氏・29歳は6月、ブラジルで開催された「FIFA World Cup 2014」で初のキックを披露した。Pinto氏を支援したのが、デューク大学のMiguel Nicolelis教授が率いる研究チームが開発したマインドコントロール型のロボットスーツだ。電極を利用して脳波を物理的な動きに変える。

Nicolelis教授が参加する非営利団体「Walk Again Project」では、このようなロボットスーツを利用することで、麻痺患者が最終的に車いすなしで行動できるようにできればと期待を寄せている。

「FIFA World Cup 2014」でキックを披露したJuliano Pinto氏

(9)次世代の大気潜水システム「Exosuit」

2013年に設計され、2014年7月に披露されたのが新しい大気潜水システム(ADS:Atomosphericc Diving System)「Exosuit」だ。体長6.5フィート(1.98メートル)、重さ530ポンド(240キログラム)で、双方向コミュニケーションが可能な光ファイバーのテザー、最大50時間をサポートする酸素系統などの特徴を備える。Exosuitによって、最深1000フィート(約305メートル)で海の生物を調べることが可能になるという。

(10)投薬に利用できる埋め込み型マイクロチップ「MicroCHIPS」

マサチューセッツのベンチャー企業であるMicroCHIPSは7月、人体に埋め込むことができるチップを発表した。薬やホルモンを遠隔から投入できる仕組みを持っており、避妊対策につながるホルモンを送り込むなどの用途に利用できるという。自身の慈善事業「Bill&Merinda Gates Foundation」を通じてプロジェクトを支援しているBill Gates氏は、途上国の女性の避妊対策にと期待しているようだ。

この技術はもともとマサチューセッツ工科大学(MIT)で開発されたもので、MicroCHIPSはMITからライセンスを受けている。MicroCHIPSは2015年に前臨床実験を開始すべく、米国食品医薬品局(FDA)に申請中。うまくいけば2018年にも製品化に漕ぎ着けたいとしている。

(11)スマートフォンを使った緑内障検査

スタンフォード大学の研究者らが、緑内障を検査する新しい方法を考案した。これは目に数ミリの小さなデバイスを埋め込み、眼内圧をスマートフォンでモニタリングするという技術で、失明に至るのを防げると期待されている。緑内障はじわじわと進行するが、症状がわかりにくいことから気づかないケースが多い。この技術は9月時点で動物実験に成功しており、次は人を利用した実験に進む。

(12)Intelのネットワーク対応車いす

「Intel Collaborators」プログラムを利用して、Intelのインターンがネットワークに対応した車いす「Connected Wheelchair」を開発した。利用者の心拍数、体温、血圧などの重要なデータをモニタリングしてくれる。今年9月に、英国の理論物理学者であるStephen Hawking博士がIntelの年次開発者イベントで明らかにした。

「Connected Wheelchair」に乗るStephen Hawking博士

Intelはさらに12月、Hawking博士の意思伝達プラットフォームとして、「Assistive Context Aware Toolkit」を発表した。このシステムは、四肢麻痺や運動ニューロン病の患者が利用できるという。同社は2015年1月より、このシステムを開発者や研究者に向けて無償で提供する予定。

(13)エコ仕様の固形燃料を利用した料理用レンジ「Zoom Jet」

途上国を中心に、世界の人口の40%が料理に固形燃料を利用している。一方で、年間400万人以上が一酸化炭素中毒などで命を落としている。これは、2012年の世界の死亡率から見て、7.7%を占めるという。

「Zoom Jet」

この問題を解決すべく、EcoZoomが開発したのが「Zoom Jet」だ。これはエネルギー効率に優れた料理用レンジで、利用する燃料を最大60%削減でき、煙の量も70%削減してくれる。2014年の「International Design Excellence Award」を受賞し、すでに9万台以上が販売されたという。

(14)注射針に代わる新しい予防接種法「Nanopatch」

オーストラリアのVaxxasが開発した「Nanopatch」は、注射針ベースに代わる予防接種手段として期待されているナノテク技術だ。大人の親指ほどのサイズで、ワクチンでコーティングされた小さな針を数千本含み、これを皮膚に押し当ててワクチンを入れる。痛みを伴わないだけでなく、液体ワクチンに必要な冷蔵保存の手間がなくなるなど、効率性も注目されている。

Vaxxasは9月、世界保健機関(WHO)よりポリオワクチン用の前臨床調査のための支援を受けたことを発表している。