今回の有料レンタルサービスの内容に話を移すと、特別なイベントがない限りは毎日行われる予定で、1回の体験時間が30分、1日の実施回数は9回。第1回は10時30分~11時で午前中は3回行われ、午後は13時30分~14時の第4回から再開し、最終回の16時~16時30分まで合計6回行われる。1回の参加人数は4人までなので、現時点では1日に36人が乗れるというわけだ。料金は前述したように700円で、体験ツアーのみの場合は入館料不要である。
ちなみに有料レンタルサービスというと、借りたら一定時間は自由に乗っていられるようなイメージがあるかも知れないが、現在はそういう内容にはなっていない。画像2のようにインストラクターと4人の参加者の合計5台が1グループが1列になって移動するような、館内の常設展示エリア以外を移動するツアースタイルの「体験ツアー」になっている。
ただし10月下旬からの予定で、未来館3階の「未来をつくる」と5階の「世界をさぐる」の常設展示を科学コミュニケーターの解説付きで1時間かけて見て回れる「常設展ツアー」が計画されているところだ(初日の時点では、体験ツアーのインストラクターはホンダのスタッフが努めていた)。
コースとしては、おそらくエレベーターで5階に上がって展示を見た後(画像13)、未来館のシンボルである大型球体複合ディスプレイ「Geo-Cosmos」の周囲を回るオーバルブリッジを下って3階に移動して(画像14)、再び展示を見て回るという形になると思われる(画像15)。展示内容が一部変わっているので解説内容は変わってくるだろうが、コースとしては以前にUNI-CUBで行われた館内ツアーと基本的には同じ内容になることだろう。
なお、料金は未定。常設展を見るので当然ながら入館料が含まれるはずで、参考までに体験ツアー+入館料を記載すると、大人の場合は700円+入館料620円で1320円、18歳以下の場合は700円+210円で910円となる。
さらにまだ先の話だが、今後、体験ツアーの方も1日の回数を9回からさらに増やすことなども考えているという。現在は10台のUNI-CUBβが用意されており、1回のツアーで5台(インストラクター1台+参加者4台)が動いている間は、残りの5台は充電しつつ休ませている具合だ。もし体験ツアーの回数を増やすとしたら、1回のツアーが出発したら、すぐに次のツアーが操縦トレーニングを開始し、フル稼働にするものと思われる。
ただし、常設展ツアーがスタートするとスケジュールが結構過密になることが予想され、10台が出払っている時間も出てくるはずなので、常設展ツアーが始まったら体験ツアーの回数を増やすのはしばらく先になるだろう(UNI-CUBβの台数も少なくとも15台にする必要があるのではないだろうか)。
申し込み(予約)は、かつて1階のショップがあったスペース(コミュニケーションロビーの大型モニターの正面)、要はエスカレーター下のスペースに新設された「UNI-CUBステーション」で行う(画像16)。受付時間は開館時間の10時~12時、13時20分~15時50分となっており、ネットや電話予約などは行っておらず、直接申し込む必要がある。その日ごとの先着順なので、開館時間と同時にすぐに申し込んだ方が確実だ(画像17)。また搭乗できる条件としては、体格に関しては身長が145cm以上で体重が100kg以内。そのほか、補助なく階段を昇り降りできること、妊娠やケガをしていないこと、飲酒していないことも条件となる。
画像16(左):UNI-CUBステーション。かつてのショップがあった場所に新設された。最初はここで操縦訓練を行う。画像17(右):各回の空きの状況が確認できるボード。14時30分ぐらいに撮影したはずだが、残すは最終回のみという状況。あまり宣伝しなくても(まぁ、ツアー自体が宣伝みたいなものだが)、未来館6~7階のドームシアターガイアのコンテンツと同様で、コンスタントに埋まっていく感じだ |
体験ツアーの大まかな流れとしては、まずUNI-CUBステーション前でしばし操縦訓練を行った後、Geo-Cosmosを見上げられる、同じ1階にある入館料なしで入れるシンボルゾーンを訪ね、その後、エレベーターホールまで移動して7階に移動。未来館ホールや会議室へ移動するための通路の一部(おおよそ未来館ホールの横辺り)でしばし自由走行を体験し、再びエレベーターで1階に下りてUNI-CUBステーションに戻るという内容だ。人混みの中でも危険もなくスイスイと走って行ける様子を動画でご覧いただきたい(動画1)。
続いては、各パートをもう少し詳しく、筆者の感想も交えながらお伝えしよう。まずは、UNI-CUBステーション前のスペースで操縦訓練を行うわけだが(画像18)、インストラクターの説明に従って前進後進に始まり(動画2)、左右への旋回(動画3)、8の字走行などを行っていく。
ちなみに筆者の場合、前進後進は1度UNI-CUBに乗っているので余裕だったが、旋回するための感覚を忘れてしまっていて、ビギナー用の旋回テクニックである「曲がりたい方向の手を横に伸ばす」で最初は曲がっていた(動画で撮影しながらなので難しいところもあったのだが)。
この手を伸ばすことに何の意味があるのかというと、UNI-CUBシリーズは重心を変えることで行きたい方向をコントロールするので、手を伸ばすことで重心位置が変わり、前進しながらであればそちら側に旋回していくというわけだ。その場で停止した状態で真横に重心をずらせば、UNI-CUBシリーズの車輪は「Honda Omni Traction Drive System(全方位車輪機構)」というオムニホイールの1種なので(画像19)、真横に平行移動することも可能である。
この重心移動は、慣れてくると上体の動きやお尻(というか腰)の動かし具合で行えるようになってくるので、筆者もツアーの終わりの頃にはカーブする時は結構スムーズにライン取りできるようになっていた。筆者、自転車乗り(いわゆるチャリダー)なので、曲がり角でのきれいなライン取りとか、筆者の自宅界隈の下町らしいウネクネした複雑な生活路をどれだけスムーズに抜けられるかなどをいつも考えてしまう性分なので(苦笑)、UNI-CUBβに乗っている時も最後にはきれいなライン取りができるようになってとても気持ちよかった。
また気持ちよかったといえば、自由走行。ここでは最高速を出しても大丈夫なので、かなり爽快感を味わえる。たかだか時速6kmといえど、屋内でも風を全身で感じられるし、視線の低さも相まって結構スピード感がある(動画4)。スラローム走行などもOKだ(動画5)。ちなみに、「人機一体」の達人クラスになってくると、1輪ドリフト(筆者命名「UNIドリ」)などもできてしまうわけだが(動画6)、その楽しさに気がついた同じグループの少年はさすがに限界を超えたらしくて、UNI-CUBβを転倒させてしまっていた。転んだ瞬間は見ていないのだが、後から聞いた話ではドリフトにトライしていての結果だったという。
ちなみに、1年半前に乗ったUNI-CUBのバランスもかなり安定感が実現されていたが、UNI-CUBβはハードウェアが一新された関係で発表当初はUNI-CUBの最新版ほどの安定感がなかったという(ハードが違うのだから、同じソフトでは同じようにバランスを取ったりするのは難しいはず)。ただし、今はほぼ同等のレベルに達しているそうだ。そのため、よほどのことをしないと転倒しないのだが、倒れる時は倒れるということで、少々驚いた。なおUNI-CUBシリーズ自体は転倒したとしてても、構造上、搭乗者は自然と足を着いて立ってしまうので、本人まで一緒に転倒するようなことは相当根性を据えてわざとやらない限り普通は起こり得ない。ちなみに今回の転倒でも少年はまったくケガをしていないし、UNI-CUBβ本体も壊れなかった。
筆者はUNIドリのことは頭になくて挑戦し忘れたのだが(たぶんできなかっただろうが)、挑戦したけどまったくできなくて悔しかったのが、その場旋回(信地旋回)。元・未来館の科学コミュニケーターで現在は同館の広報を努めるCさんによれば、科学コミュニケーター時代にUNI-CUBシリーズを1年間ほど乗っていたそうで、そのぐらい乗っているとまさに人機一体になれ、「UNI-CUBに乗っている」ということを意識せずに自分の身体の一部のように操縦でき、信地旋回も余裕だったという。ただし、乗り慣れた科学コミュニケーターでもできない人はできないそうなので、信地旋回はUNIドリと並んで最上級のテクニックのようだ。この信地旋回、エレベーターに前向きで乗った時などに役に立つので、UNI-CUBライダーとしては身につけておきたいテクニックである(筆者はエレベーター内で壁を使って180度反転をした)。
またCさんによると、UNI-CUBβを上手に操るコツとしては、バイクのライダーならお馴染みのガソリンタンクをヒザで挟んでしっかりホールドして走ると一体感が生まれるというのと一緒で、両脚のヒザから下でUNI-CUBβの前部を挟み込んでホールドするといいらしい。が、筆者の場合、UNI-CUBに比べて小型化しているUNI-CUBβは足の長さがサイズ的に合っていないので、ホールドがどうもうまくできなかった。もうちょっと長く乗っていられれば、うまくホールドするコツもつかめるとは思うのだが。
さらにコーナリングする際のコツとして、「曲がりたい方を見る」も重要だという。これまたバイクや自転車の話だが、見た方向に車体が進んでしまうといわれており、それを逆手にとって実践すればいいのである(これはUNI-CUBに乗った時にもいわれたのだが、忘れていた)。
それから、UNI-CUBβに乗った感想としては伝えておきたいのが、ロボットなんだと改めて感じられたこと。UNI-CUBシリーズは基本1輪車であり、普通は走って遠心力を発生させない限りは倒れてしまうわけだが、その場に静止して自立していられるのは、倒れそうなバランスの変化を感じたらすぐさまその方向に動いてバランスを立て直しているからである。それは搭乗者が乗っていても常に行われており、そのためお尻の下で生き物が搭乗者とは別の意志を持って動いている感じがするのだ(画像20)。この小刻みな動きは、何か馬などの生き物にまたがっているような感覚で、UNI-CUBβが転ばないよう一生懸命支えてくれているように感じるのである(動画7)。
この感覚を、冒頭で名を挙げた小橋氏に伝えると、元々U3-Xを含むUNI-CUBシリーズは馬を作りたくて開発を始めたということなので、その狙いが確実に実現に向かっている証拠といそうだ。この生き物的な、搭乗者の意志に関係なく動いている感覚は不思議な感じがしてなかなか興味深いので、実際にUNI-CUBβに乗った時は、意識してみてほしい。