クライアントが抱えている課題と、その解決法とは――
第一部の最後では、今後の注目手法をWebマーケティングのトレンドキーワードをもとに5つ紹介。同氏から挙げられたのは「ソーシャルメディアマーケティング」「コンテンツマーケティング」「ネイティブアド」「動画広告」「オムニチャネル」だ。
トレンドというには、ホットな時期が過ぎ、今や当たり前に活用されている手法も少なくない。特にここで参加者の興味を引いたのは、現状クライアントが抱えている悩みと、その解決策だろう。
一例を挙げると、多くの企業が抱えている悩みであるソーシャルメディア上で集めたファンを、その後Webサイトなどでどう活用するのかというものだ。そこで、FacebookやTwitterでタグをつけて投稿されたユーザーの写真を、本体のWebサイトにまとめて表示させて、一つのコンテンツを作った事例を紹介。「ハッシュタグをベースにして、ユーザーが投稿した写真を収集して、それを一つひとつチェックして、承認したものだけを、自社サイトのコンテンツとして掲載します」という同氏。日頃、たくさんの写真や動画がSNS上にアップされており、実際にユーザーが発信している情報は、信頼性が高く、興味をひきやすいコンテンツの力があるので、こうしたやり方がひとつの表現手法として今注目されているという。
第一部としては、表現手法の紹介だけにとどまらず、企業の課題などにも触れ、より現実性を帯びた明日からの提案などにも活かせる内容となっていた。最終章にあったトレンドキーワードの「オムニチャネル」は引き継ぐかたちで、久米田氏にバトンが手渡された。
オムニチャネル化が急速に進んでいる
コネクトム 久米田氏 |
オムニチャネルは、2,3年前からアメリカで提唱され、国内でも1年ほど前から注目を集めているマーケティング戦略のひとつ。「今は概念が先行して、企業(クライアント)の期待値がほぼ最高潮に達している状態です。私たちには概念を具体化して、段階的に進めていくことが求められていますので、今日はオムニチャネルの概念の捉え方から、具体的な設計方法についてお話します」と説明してくれたのは、第二部を担当する久米田氏。同氏は、もともとオプトでO2OやSmartTV関連事業の開発に携わり、O2O集客支援サービスのシステム構築を手掛けるRetailigence社のM&Aもけん引。現在、コネクトムを創業し、オムニチャネル事業を展開し、手腕を奮っている。
まずは、自身の会社で提供しているサービスやミッションをもとに、オムニチャネルが目指す世界観から、マーケティングの変化、理想構造、そして具体的な施策案までを、事細かに解説してくれた。
「生活者は、様々なチャネルで、そのときに欲しいコンテンツを、そのメディアに適した見せ方で求め始める。それらの行動変化に対応していくことがオムニチャネルである」と同氏。つまりオムニチャネルでは、適したタイミングで、適した情報を、適した場所に届ける「適時適情適所」のリアルタイム性が求められ、これが実現できると生活者にニーズを超えた感動体験が与えられるのだ。しかし一方では、「実現までの長期PDCAサイクルの運用」が必要不可欠でもある。「オムニチャネル化を実現するためには、長期的なPDCAサイクルが必要で、大企業であれば5年以上かけて取り組んでいます。それだけ長い時間がかかるということは、巨額の投資が必要になり、それを判断するための、根拠となる情報・実績も欠かせません。また組織の再編、理想とするミッション・ビジョンにも大きな価値が求められる」と同氏は言及する。
まだまだ日本に定着していないオムニチャネルゆえに、クライアントからは「オムニチャネルやO2Oは海外の話で、日本にはそんなニーズはないんじゃないか」ということを度々質問されるという同氏。「国内でも同様のニーズがあるのか」を調査した結果、実店舗での買い物に不便を感じている方は7割もいることがわかった。こうした生活者の変化の他に、企業側でもデータ活用や仕組みの構築に取り組み、オムニチャネル化が急速に進んでいる事例などが紹介された。「オムニチャネル」はこれからのマーケティング。時間のかかる手法だけに、実例を詳しく見ることができなかったが、最新事例の一端にふれ、具体的な施策を学べたことは、参加者にとって大きな収穫になったに違いない。
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