■アフレコ
「アフレコ」という単語自体は比較的周知されているが、これは絵ができた後に音声を入れる、という意味の「アフターレコーディング」の略。ここで、声優がキャラクターに声を吹き込んでいく。
日本の30分アニメは真ん中にCMをはさみ、AパートとBパート(各パート約10~12分)に分かれている。アフレコ現場では、まずAパートを通して練習し、その次にすぐAパートの本番へと移行する。基本的に各パートの一発で通して録音するのが普通で、どもり、言い間違いなど使えない部分が出た場合のみ、スポットで撮り直しを行う。しかし、舛本氏が立ち会ってきた経験上、ひとつのパートのアフレコにおいて、撮り直しはあっても10回以下とのこと。
このような収録形式に対応するため、日本のアニメ分野で活躍する声優には、ほぼ1発勝負で録音されるという状況の中、切り替わりの激しい多様なシーンにあわせて感情を素早く切り替え、映像の口パクにあわせてセリフを読み上げるという技術が必要とされる。しかも、今回題材となった「キルラキル」は、テレビアニメの中でも特に展開が早い部類に入るという。舛本氏は、日本のアニメが週50~60本も作られているのは、声優たちの技術力の高さによって実現しているところも大きいと熱弁した。
■SE(効果音)
ここでセリフが吹き込まれたが、キャラクターの足音やつばぜり合いの際に剣が重なった時の音などは「効果」という役職が入れる。効果音はアニメを単に見ているときにそれ自体を意識する部分ではないが、とても重要なファクターだという。
例えば、現実に「変身シーン」は存在しないが、ヒーローものや魔法少女もののアニメには、それらしい効果音がついている。脳内にある「それらしい」音を生み出すSEの作り手は、映像において重要な役職だ。そんな大切な役職ではあるが、視聴者には意識されにくい縁の下の力持ち。舛本氏は、「キルラキル」では効果音が多用されていることもあり、今後アニメを見る際は注目してみてほしいとコメントした。
■BGM
キルラキルのBGMを手がけたのは、「ガンダムUC」や「進撃の巨人」といったアニメ、「医龍 Team Medical Dragon」などの実写作品など、ジャンルを横断して映像のBGMを手がけている澤野弘之氏。昨今のアニメ作品ではサウンドトラックがリリースされてはいるが、やはりBGMも映像視聴時にそれだけを意識して聞くことは少ない。BGM(Back Ground Music)の名の通り、映像の背後で流れている音楽だが、単に流れているのではなく、視聴者の感情をリードしている重要なパートであると強調し、シーンごとに解説を行った。
鮮血と流子が和解するシーンでは、本来ボーカルの入ったメインテーマから歌詞を抜き、あえて間奏部分も使うなどして、セリフを聞かせるためにあえて音量もトーンダウン。この後、変身シーンでは一気にボリュームを上げ、ボーカル入りのテーマ曲を流すことで、ぐっと観客の気分を盛り上げ、高揚させる。BGMに演出上の意図が多分に含まれていることをあえて言葉で示しながら、舛本氏は「観客が面白いと思う映像には、音楽にもトリックがある」のだと語った。
■完成
ここまでの解説を経た後、最後に再び完成した映像が流された。たった1分程度の動画ながら、これだけ多くの人の手により作られたことを知った後では、入学希望者たちの見方や着目点が異なってくるのではないだろうか。