新たなパートナー事業で特に強化されるのは、デルの保有する豊富なソリューションを含めたトータルでの提案力と、これまで行き届かなかった部分へのリーチだ。

「デルはハードウェアの会社というイメージがあります。しかし近年、多くの企業を買収してきた結果、非常に多くの優れたソリューションも保有しています。これまではそうしたソリューションの提案までできていないこともありましたが、今後はパートナー教育にも力を入れ、トータルでの提案が行えるように強化していきたいと考えています」(渡邊氏)

これまでは日本の商習慣に合わない部分があったり、製品的な知識が十分に得られていなかったりと、デルのソリューションを販売しづらいと感じていたパートナー企業に、より快適に、よりよい形で販売してもらう機会を増やすための仕掛けも用意していくという。

また、そうしたパートナー事業強化によって、これまで手がの回っていなかった部分もカバーできるようにする。たとえば、デルは東京と大阪を拠点にSMB向けビジネスを行うことを得意としているが、これ以外のユーザー企業には、十分な対応ができていなかった。そこをカバーするというわけだ。

「たとえば、これまでお伺いする頻度が少なかったお客様、十分な情報が提供できていなかったお客様には、より近くにいるパートナー企業と連携をとることで、頻繁にお伺いし、ご要望をうかがえるようになります。これまでデルが得意としていなかった大企業や業種などにも、そうした分野への導入が得意なパートナーがいればデルのソリューションをお届け出来るようになります」と渡邊氏は語る。

デルがダイレクトに関わるユーザーと、パートナーが担当するユーザーとをうまく分けることで、よりよいサービスが提供できることを狙っている状態だ。

「パートナー事業の強化によって、ダイレクト販売のデルというイメージを『ダイレクトもパートナーもあるデル』という形に変えて行きたいですね」と渡邊氏は企業イメージの転換についても語った。

7:3から5:5を目指してパートナー事業を推進

デルはパートナー事業を強化することで、全体の売上構成比を変化させようとしている。これまでは全体の約7割がダイレクト販売によるものだったが、これを半々程度までパートナー販売を強化しようとしているのだ。

「現在3割しかないパートナー販売の部分が倍増すれば、仮にダイレクト販売が現状維持だった場合、すぐに五分五分の状態になります。実際には1~2年程度をかけて、半々の状態に持っていきたいですね。外資系企業の特徴でもあるのですが、これまで比較的短期間に結果を得ようとする傾向がありました。しかしパートナー事業強化については、少し時間をかけて堅実に進めたいと考えています」と渡邊氏は語った。

この戦略によって、エンドユーザーにとっても変化がある。前述のように、これまで以上にデルとの接点が増え、よりよいソリューション提案を受ける機会が増えるのはもちろんだが、管理面等でも利便性が増しそうだ。

「これまではデルの製品を販売したくても扱いづらい、購入したくても普段頼りにしているパートナーからは購入できない、というようなことがありました。デル製品を扱えるパートナーが増えれば、他のベンダーと同じようにデル製品を購入することができるようになります。これまでデルだけでは手薄になっていた部分が強化できますし、よりよい提案を受け、良質なソリューションをご利用いただけるようになるはずです」と渡邊氏。

デルのパートナープログラムには3つのグレードがある。現在、エントリーレベルであるRegisteredは日本全国で2000社ほどあり、専門的なパートナーであるPreferredと非常に優れた実績を持つPremierは合わせて20社ほどあるという。今後同社では、それぞれの数を増やし、より上位のパートナーとなるための教育機会なども数多く提供していくという。