2014年度はエンタープライズ事業にとってどんな1年になりますか?

デイビス 昨年度は、サーバ分野において、アジア太平洋地域ナンバーワンのポジションを奪回したのは大きな成果であり、自信になっています。地域最大のサーバベンダーとして、どんな価値を顧客に提供できるのか、付加価値を提供できるのかをもっと深く考えていく立場になったと考えています。課題があるとすれば、Force10とCompellentですね。これらの事業は、買収して日が浅いということもありますし、買収前からアジアでのビジネス規模が小さかったという背景もあります。

昨年は、ここに集中的に投資して、ビジネスを拡大する基盤を作る1年だったともいえます。具体的にはソリューションセンターを開設したり、スペシャリストを増員したり、テクニカルサポートを増員するということにも取り組んできました。

日本の顧客の声を聞くとわかるのですが、昨年は日本の市場が世界の顧客に追いついてきた1年であったのではないかと考えています。サーバの仮想化やUNIXからオープン環境への移行に関しては、日本が遅れていた傾向がありましたが、いよいよそうした状況から脱却し始めたといえます。仮想化のトレンドが加速していることを感じますね。例えば、日本航空が、デルのサーバとストレージを導入し、Hyper-Vによる仮想化を実現したというのもその一例ではないでしょうか。

デル 執行役員 エンタープライズ・ソリューションズ統括本部長 町田栄作氏

町田 私が感じるのは、昨年、日本におけるデルのエンタープライズビジネスが加速していることを証明した年でもあったという点です。iSCSIは日本では21四半期連続でのナンバーワンを維持していますし、ストレージは前年比2桁の成長を遂げています。

ネットワーキングビジネスはまだスタートしたばかりですが、成長に向けての加速度は高まっています。さらに、仮想化の流れがデータセンターの仮想化だけでなく、VDIによるエンドポイントを含めた仮想化の動きが出始めています。パートナーとの連携によって、100とか、1000といったライセンス数でも、VDIの提案を行える仕組みも構築できました。

オープンスタックに関する活動を行う「オープン・スタンダード・クラウド・アソシエーション(OSCA)」も、参画企業数が増加し、活動も活発化しています。特定領域に強みを持つ「尖がった」企業の参加もあり、幅広いニーズへ対応できる体制が整い、さらに対外的なイベント活動でも成果があがっています。これも日本における成果のひとつだといえます。

デイビス 今年に入ってからは、クラウドへ移行する顧客が増加するなかで、ITへの要求が変化してきていますね。パブリッククラウドが注目を集める一方で、多くの顧客が、改めてプライベートクラウドを重視する傾向が強まるのではないでしょうか。

そのなかで問題になってくるのは、パブリッククラウドには、効率性、弾力性があるが、プライベートクラウドにはそれがないことです。パブリッククラウドはクレジットカードを使えば、リソースをすぐに割り当てられますが、これと同じことがプライベートクラウドでは実現できません。CIOが求めているレベルには到達していません。そのためには、これから自動化が大きな鍵になってきます。つまり、x86サーバの70%を仮想化すればそれでいいというわけではなく、ストレージも、ネットワークも仮想化しなくてはならない時代が訪れています。また、セルフサービスのポータルや、ワークロードのオーケストレーションも必要となり、ビジネス側のニーズにあわせて、自動的にプロビジョニングを行う柔軟性も必要になります。

顧客はマーケティング事業領域から投資を行うことに強い関心を持っています。そこでは、ビジネスインテリジェンス、分析機能が重要になっています。既存顧客の満足度を高めるとともに、新たな顧客を獲得するための仕掛けも必要になってきます。データをもとにして最適な方法を導き出すといったことが求められています。デルは、ここに対しても製品、サービスを提供できる環境を構築しています。Hadoopに多くの投資を行い、情報から価値を引き出し、顧客の意思決定を支援する仕組みを作っています。

そして、顧客は今後どこに重点的に投資をしていくかというと、やはりそれはモバイルということになります。ただ、明確なモバイルに対する戦略を持っているユーザー企業はそれほど多くはありません。インフラをモバイル化するとともに、BYODへの対応をどうするのかといったことも重要な要素です。従業員が持ち込んだ私物のスマートフォンやタブレットをいかに管理するか、セキュリティをどう担保するか、そして、従業員が辞めたときには、そこにある企業データ、顧客データを消去することができるのか、といった法律への対応、ルールづくりといったことまで視野に入れる必要がでてきています。こうしたことを含めた一貫したモバイル戦略を提案していくことが、デルには求められていると感じています。

また、顧客にとってのもうひとつの重点投資分野がセキュリティです。毎週、セキュリティ関連のニュースが飛び込んできていることからも明らかにように、企業にとって情報漏えいは、身近であり、大きな課題となっています。今後、十分なセキュリティ対策を取っていない企業に対しては、政府がペナルティを課すといった動きも出始めているほどです。ソーシャルメディアの普及によって、セキュリティで問題を起こした企業は、すぐに話題となり、企業価値の失墜、ブランドが傷つくといったことが起こりやすい環境になっていることも見逃せません。システム構築において、セキュリティの強化は大きなものだといえるでしょう。ここにもデルは最適なソリューションを提供していくことができます。