増加するVDIに対処する「Extreme Cache」と「SAN/NAS統合ユニファイド」

仮想化環境でもう1つ留意すべきは、VDI(デスクトップ仮想化)である。

情報漏えい防止やコンプライアンス対応、さらにワークスタイルの多様化などから、クライアント端末に実行環境を持たないVDIの導入は加速している。

しかし課題となるのが、Boot Storm問題だ。特に起動が集中する始業時間帯は、大量のリード処理が発生する。

荒木氏は、「VDI環境では、『大量のリード処理性能』『データストアに対するアクセスを制御する排他制御』『ファイルサーバ領域の共有』といった機能が要求される」と指摘する。

大量のリード処理は、前述したストレージ自動階層制御のほか、ETERNUS DX S3 seriesの最新フラッシュテクノロジーである「Extreme Cache」が有効な“解"となる。これはコントローラー内蔵型のSSDキャッシュであり、リードアクセス時のキャッシュヒット率を大幅に向上させるものだ。例えばExtreme Cacheのキャッシュヒット率を30%で算出した場合、オンラインHDD 100台を搭載した場合とオンラインHDD 100台にExtreme Cache 4台を追加した場合を比較すると、最大4倍の性能向上が見込める。また、キャッシュという機構は一時的な負荷変動に対し迅速に対応できる特徴がある。

また、ファイルサーバ領域の共有で注目したいのが、「ユニファイドによるSAN/NAS統合」である。従来であればSANストレージとNASストレージを共存させるには、NASゲートウェイを導入する必要があった。

しかし、ETERNUS DX S3 seriesでは、NASゲートウェイを導入することなく、同一筐体内にSANストレージ領域とNASストレージ領域を共存させられる。両領域をETERNUS DX S3 seriesに集約することで、管理者負担の低減だけでなく、スペースも電力消費も抑制できるのだ。

仮想化環境でもう1つ考慮しなければならないのが、バックアップにかかる運用負荷の低減である。データ量が膨大になった結果、従来の手法ではバックアップ用ディスクのサイズやバックアップ処理にかかる負荷も大きくなってしまう。これを解決するためには、重複排除ストレージが多く利用されており、特に仮想化環境では重複排除の効果も高いため有効である。富士通の製品群においてこの重複排除を実現するのは、「ETERNUS CS800 S4デデュープアプライアンス」である。なお、ETERNUS CS800 S4デデュープアプライアンスのデータ量の削減率は最大で90%である。

サーバに負荷をかけない重複排除/圧縮で、最大90%のデータ量が削減可能だという

高速/高密度/低消費電力化で新データセンターに対応

ビッグデータの高速分析が要求される中では、高負荷環境でも安定したレスポンス性能が求められる。それを実現するのが、オールフラッシュアレイの「ETERNUS DX200F」だ。

毎秒12ギガビットの転送能力を持つSASインタフェースを採用したことで、I/O負荷が高い環境においても0.5ms(ミリ秒)という低いレイテンシを実現している。ディスクのみで構成した「ETERNUS DX200 S3」と比較すると、消費電力を90%、設置スペースを最大50%削減しているという。

ブースに展示された「ETERNUS DX200F」(詳細は展示ブースレポートを参照)

ETERNUS DX S3 seriesにも、省スペース化と低消費電力化を実現する機能が備わっている。「高密度ドライブエンクロージャ」は、HPCやアーカイブの大容量用途に最適だ。荒木氏は、「従来と比較し、1UあたりのHDD搭載数は2.5倍、設置面積は50%以下に低減している」と説明する。

同じくブースに展示された「高密度ドライブエンクロージャ」(詳細は展示ブースレポートを参照)

また、従来モデルから搭載されているMAID技術を応用した「エコモード」も改善された。これまでバックアップ用HDDなど使用しない時間帯はディスク回転を停止させ電力を抑えていたが、加えてHDD制御基板への電源供給も停止することで、さらなる消費電力の低減も図られているという。

荒木氏は「ETERNUS DX S3 seriesは新データセンターが要求する機能/要件をすべて備えている。前述した機能/性能向上のほか、高密度実装や低消費電力、高効率な電源といった要求にも応えられる」と、そのアドバンテージを強調する。

MAID技術の進化により、電力消費量のさらなる削減

加速する技術の進化には「インフラと業務の分離」で対応

では、目指すべきビックデータ時代の仮想化統合基盤とはどのようなものだろうか。

荒木氏は、「物理システム/サイロ型の仮想化システムを解消し、全体最適化を実現できる仮想化統合基盤だ。そのためにはサーバ、ストレージ、ネットワーク、ハイパーバイザーなど、一定期間でリプレースが必要なICTインフラを仮想化統合基盤で統合して業務と分離させる。そして、その基盤上でさまざまな業務システムを運用できる環境が必要だ」と説く。

インフラと業務とを分離させることで、TCOを削減し、効率のよいICTインフラ投資や、ICTガバナンスの強化を実現するのが最適であるというのが、同氏の、そして富士通の“解"である。

とはいえ、こうした環境構築をすべて自社で実行できる企業は少ないだろう。富士通ではそうした企業に対し、現在のインフラ環境(物理システム/サイロ型の仮想化システムやストレージ環境)を把握/分析したうえで最適な環境を提案する「仮想化アセスメント」と「ストレージアセスメント」を提供している。現在の環境に課題を抱えている企業は、「状況を理解し、課題を棚卸しする」といった観点からも、ぜひ一考してみる価値はあるだろう。

最後に荒木氏は、「技術進化のスピードは加速している。そうした状況では、テクノロジーの進化を見据えたインフラ計画が不可欠だ。時期を見誤らず適切に導入することで、コストの最適化も可能になる」と語り、講演を締めくくった。