5月15日から2日間の日程で開催された「富士通フォーラム 2014」(会場:東京国際フォーラム)では、同社が開発/提供するICTソリューションの展示や製品/技術動向を紹介する各種セミナーが催された。

90に及ぶ講演のなかで特に人気を集めたのが、肥大化するデータを最適な投資で効率的に活用するノウハウにフォーカスしたセッション「ストレージ活用の最適化によるICT運用の変革」である。ここでは満員となった同セッションの内容を紹介しよう。

最新のストレージ技術について解説した『ストレージ活用の最適化によるICT運用の変革』は、早々に定員オーバーとなる人気ぶり

富士通フォーラム 2014 レポート

「富士通フォーラム 2014」のレポートを以下にも掲載しております。併せてご覧ください。

ビッグデータ時代のストレージシステム要件とは

富士通 プラットフォーム技術本部 プロダクトソリューション技術統括部 シニアディレクターの荒木純隆氏

富士通は今フォーラムのテーマに、「Human Centric Innovation」を掲げている。これは、人が快適に活動できる環境の実現に主眼を置き、ICTによって知恵の創造や生活の質の向上を支援する取り組みである。

こうした取り組みには、ビッグデータの利活用が不可欠である。近年は、モバイルデバイスの普及やソーシャルメディアの浸透、さらにIoT(Internet of Things)の台頭などにより、膨大かつ多様なデータが蓄積されている。同社の調査によると、こうしたビッグデータは、2013年の4ZB(ゼタバイト)から2020年には約10倍に増加すると予測されている。

スピーカーを務めた富士通 プラットフォーム技術本部 プロダクトソリューション技術統括部 シニアディレクター 荒木純隆氏は、「ビッグデータが価値を生むものとして蓄積/活用される今、データ管理基盤となるストレージ・プラットフォームに対する要件も変化している」と指摘する。

荒木氏は、ビックデータに対するストレージシステムの課題として、「多様化するインフラ環境への対応」「高負荷環境への対応」「インフラへの投資コスト最適化」を挙げる。仮想統合基盤で効率的なデータの保管/管理/分析を実現し、高負荷環境でも安定したパフォーマンス/レスポンス性能を発揮する。さらに、ディスク増設コストや消費電力も抑制できる環境が求められているというのだ。

こうした要求を満たすのが、「ETERNUS DX S3 series」を核とした「ETERNUS」製品群であると荒木氏は説く。「データ運用からバックアップ、ストレージ管理までを網羅し、多様化するさまざまな業務に対応する。ETERNUS(製品群)は、ビッグデータ時代を支えるプラットフォームであると同時に、ビッグデータ時代におけるインフラ環境の主流である仮想化環境が抱えるシステムの課題を解決し、管理者負担を劇的に低減させるものだ」(同氏)。

富士通のストレージ製品提供ロードマップ。基幹系からストレージ管理系まで、すべての分野を網羅している

仮想化環境の課題を解決、キーワードは「自動化」

サーバ仮想化技術の普及から、基幹系/情報系を問わず、システム基盤を仮想化環境で統合する企業が増加している。それに伴い、新たな課題も浮き彫りになってきた。それは、あらゆる業務が混在することで、活用状況に応じたリソース/データの最適配置が必要になることだ。以前はこうした性能配分やリソースのチューニングは、個別設定が必要だった。しかし、スピードと柔軟性が求められる現在においては、それらを手動で行うのは難しい。

荒木氏は、「そうした課題を解決するのが、ETERNUS DX S3 series/ETERNUS SF Storage Cruiser 16が提供するストレージ自動階層制御の機能と、QoS(Quality of Service)自動化機能だ」と説明する。

ストレージ自動階層制御は、アクセス頻度の高い業務データはレスポンス時間の短いSSDへ配置し、保管が主な目的のデータであれば、低コストのニアラインディスクへ配置する。こうした再配置を自動で行うことで、パフォーマンス向上と、保管/管理コスト低減を実現するものだ。荒木氏によると、ストレージ自動階層制御の導入で、従来のバッチ処理時間を80~50%も短縮できた製造業もあるという。

アクセス頻度に合わせて、データを最適なドライブに自動で再配置する「ストレージ自動階層制御」機能

一方、QoS自動化機能は、業務の優先度に応じてI/O性能を自動チューニングするものだ。優先業務のボリュームに必要なレスポンスタイムを設定するだけで、I/O性能の自動チューニングが可能。優先度の高い業務(アプリケーション)のI/Oを優先させることができるため、他業務のI/O負荷変動の影響を受けることなく安定したパフォーマンスを保つことができる。

また荒木氏は、「自動化と同様に大切なのが、業務継続性の確保である。ETERNUS DX S3 series/ETERNUS SF Storage Cruiser 16はストレージシステムでトラブルが発生した場合、管理サーバが異常を検知してサーバからストレージへのI/Oアクセス先を自動でSecondaryのストレージへ切り替え業務を継続できる『Storage Cluster』機能が備わっている」と語る。

より確実な24時間、365日のシステム運用が可能になり、ビジネス機会損失の抑制を実現できる。