LTEは更なる高速化へ
続いて案内されたのは電波無響室。ここでは、au携帯電話に利用される無線電波の各種技術検証が行なわれる。電波無響室はドラマ「ガリレオ」などで紹介されたこともあり、見たことがある方もいるかもしれないが、全体が尖った"電波吸収帯"のスポンジで覆われている。このスポンジは、中身が黒く炭のようになっており、柔らかい。普通の実験室では外部の基地局やスマートフォン、果ては近くに居る人間から出る微弱な電波まで干渉する可能性があるため、それを防いで正確に電波の特性を測定するために電波無響室が利用されている。
現在、広く普及し始めた4G LTE端末だが、今後は「MIMO技術」を導入することで、更なる高速化を図る。基地局とスマートフォンのアンテナを2本ずつに増やすことで2データを分離してパラレル伝送を実現する。これにより、データ速度が2倍に向上するそうだ。
1秒でBlu-ray351枚分のデータ転送が可能に!?
続いては長距離光ファイバ伝送技術。以前、「アンビリカルケーブルで守る! - KDDI海底ケーブル保守船が公開(画像90枚)」でも紹介した海底ケーブルで利用される長距離光ファイバ伝送技術は、1年で1.4倍のスピードでデータ量が上昇している。
今後、データ量の増加に対応していくため、日々研究開発を行なっている同研究所だが、次を見据えた技術として「マルチコアファイバ伝送技術」を紹介した。
同技術では、データを転送する"コア"をこれまでは1つの光ファイバケーブルに1つしかなかったものを複数設置することを目標に技術開発が行なわれている。これにより、コア数を増やすだけ伝送容量が増加するメリットがある。この技術はすでに実証実験が行なわれており、大陸間を結ぶような国際海底ケーブルクラスの実証に成功したという。これが商用化されれば、現在の最新商用技術では1秒間にBlu-ray8枚分、3.2Tbのデータが転送できるのに対して、1秒間に351枚分、140.7Tbが転送できるという。
同じ空間にいる感覚を得られる"テレプレゼンス"
最後に紹介されたバーチャル空間共有では、リアルタイムに自分自身も同じ空間に入り込めるテレプレゼンス技術の研究開発が紹介された。
遠く離れていても同一の会議場所にいる感覚を共有できる「テレプレゼンス」だが、ビジネス向けのソリューションでは多数のディスプレイを専用の部屋に並べると言った大規模なシステム構築が必要になるため、現状ではコストが高くなると言う。
そこでKDDI研究所では、ブルーバックなどを利用しなくてもビデオカメラで撮影している人物"だけ"を、テレビ内の動画に合成して臨場感を高める技術の開発に取り組んでいる。
これにより、テレビ電話などの課題であった「自分の部屋といった見られたくない背景を写すことなく顔が見られるようになる」(説明員)とのことで、今後はスマートフォンを利用した展開なども視野に入れていければとしていた。