アドバンストの走行体はトライク型に変更

また、アドバンストに関しては走行体も大きく変わる点も大きなポイント。これまでの倒立2輪振子型(画像7)ではなく、トライク(3輪バイク)型「NXTrike」となる(画像8~11)。倒立2輪振子型走行体を作るためのセットに含まれる未使用のパーツも使って組み立てるので、2013年参加しているチームはアドバンストにも出られるというわけだ。

画像8(左):NXTrikeの実機を前方から。画像9:同じく実機を側方から

画像10(左):NXTrikeを横方向から見たもの。画像11:同じく横方向後方から見たもの

NXTrikeは後2輪駆動で、それぞれモーターを備えていて左右独立して駆動させることが可能。前の1輪はウォームギアでステアリングを切る操舵輪の役割だ。動きに関する倒立2輪振子型との大きな違いは、倒立2輪振子型のように回転半径ゼロの信地旋回ができないため(最小回転半径が存在する)、Rのキツいコーナーを抜けるには工夫が必要となることだ(動画1)。

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動画1。NXTrikeがライントレース走行する様子

その工夫の1つが、あえて重心が高くなおかつ後方寄りに設定されていることを利用したウィリーによる倒立2輪振子走行(画像12)か、もっと後方へ反ることで補助輪を設置させてリバーストライク(前2輪・後1輪の3輪車)状態の「尻尾走行」(画像13)を行うというものだ。

ウィリー走行は、どれだけ急発進しても不可能だが、バックして1度後方への慣性力を発生させてから瞬間的に前進に切り替えると、前輪が簡単に持ち上がる。後はバランスを取るだけだ。ただし、このバランス取りは相当難しいので、ETロボコン実行委員会でも実際にできてはいないそうで、「構造上は可能なので、参加者にぜひ実現してもらいたい」としている。

もう一方のリバーストライク走行は、そのウィリーをもっと強力に行って後ろに反っくり返るようにすると実現する。反っくり返っての転倒を防ぐための小型補助輪が設置して、通常のトライク状態から90度後方に回転した状態、つまりそれまでの尾部を下側にした形で走ることができるようになるのだ。この状態にしてしまえば安定するので、ウィリー走行よりも簡単である。

画像12(左):ウィリー走行(のイメージ)。画像13:実機の尻尾走行状態(走行はしていない)

また倒立2輪振子型走行体では使用されていないが、基本セットの中にギアが複数あり、NXTrikeではギア比を1:1、1:3(3倍)、1:5(5倍)の3種類から選ぶことができるようになっている(画像14・15)。つまり、スピード重視にするか、トルク重視にするか、それとも無難なバランス型にするかという戦略を各チームが選べるようになったというわけだ。ただし動画2でご覧いただける通り、バランス型とされる1:3ですらこれまでの倒立2輪振子型走行体とは比較にならない速度が出るため、かなりコントロールは難しそうである。

画像14(左):3種類のギアの組み合わせ。画像15:ギアの位置(赤枠で囲まれている部分)。画像下側の走行体の黒いギアが1:3の組み合わせで、上側の走行体(グレーのギア)は1:1

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動画2。1:3のギアでのほぼ全速走行と尻尾走行の様子

まして1:5となると、これまでのコースレイアウトであれば、その最高速を活かしきれる場面はあまりないはずだ。おそらく、スタート直後のメインストレート、1コーナーを抜けた後のセカンドストレートぐらいではないだろうか。しかもトルクがなくなるため、坂やシーソーなどで上る時は事前に勢いをつけないと厳しい可能性もある。しかし、もしコントロールすることができたら、その圧倒的な速度はタイムアタック的には間違いなく魅力的なのも事実だ。

ただし速度は出るといっても、コーナー進入時にきっちり減速しないと、重心が高いために転倒する恐れはある。よって、1:5のギアを最高速重視のチームは、ライントレースではなく、もはやコース幅いっぱいを使ったレースのライン取りのような感覚で行く必要もあるかも知れない。ともかくギア比が3種類になっただけで、どんな戦略を採るか試行錯誤する時間が非常に増えるというわけで、非常に楽しみというわけだ。