また、なぜオリンピック招致のスピーチを太田選手が行うことになったのか? 実はそれは「与えられた」ものではなく、彼が積極的にその席を「獲りに行った」ことで実現した、という舞台裏が明かされていく。
自分がそれを行うことで、下の世代にその姿が見せられるということ。そしてそれは、ひいてはフェンシングというもののブランディングになるということ。だから全身全霊で9月7日のプレゼンテーションの席を獲りに行った、と。
あのプレゼンテーションの裏にどのような戦略と信念が隠されていたか、その真相にはただただ驚かされるばかり。その冷静な戦略と実行力の素晴らしさに
「……落合社長、こういう社員欲しくないですか?」(河尻)
「欲しいですね!!」(落合)
という会話も。おそらく、会場に居た参加者の大半も同じように思っていたに違いない。
太田選手の話を聞いて「太田さんの話には起業家のマインドと同じものを感じますね。それは“できるまでやる”ということ。
大抵の場合、起業の先には困難しかない。でもそれは勝つまで、クリアするまでやるしかない。ゲームで敵が出てくるのは当たり前、と言った起業家も居ましたが、むしろそれを楽しめるくらいじゃないと。
人材育成で、そういうマインドを引き出すことは可能」と落合社長。「そのためには現体験と、ゴールをはっきりすることが大事なんでしょうね」
という河尻氏の言葉に、太田選手から「スポーツ選手は金メダリストの後に燃え尽き症候群になることが多い。それは次の目標を決めることが難しいからではないか。ビジネスの世界ではある目標を達成した後、次のビジョン、目標設定はどうしているのか」と落合社長に質問が。
「そこで大切になるのは“ビジョン”ですよね。半年、一年後、そのもっと先に何を自分たちが行うべきなのか。誰かが考えて浸透してもいいし、全員で対話して考えてもいい。ただビジネスは自由度が高くていくらでも考えられる分、正しく共有するのは実は意外と難しい。それでもそのプロセスをきちんと行うことが、組織として長く続いていくコツとなっている」(落合社長)
その言葉を受けて、太田選手の今考えている今後の目標の話に。銀メダルはあくまでもツール、アスリートとして有終の美を飾れるように頑張りつつ、今後の目標はIOCであること。
そして、スポーツというものの価値を高め、多くの人にその楽しさを知ってほしい……ということ。世界を視野に入れたそのビジョン、志に、大きな刺激を受けた参加者も多かっただろう。
片やビジネス・人材育成の世界、片や国際的スポーツ選手。一見違うジャンルに思えながらも、蓋を開けてみたら共通点の多さに驚かされる。グローバルに活躍するためのビジョンを持つということは、どのジャンルでも共通のようだ。
質疑応答では、登壇者への質問も積極的に出た今回のセミナー。2014年の幕開けに相応しい、刺激的かつ濃密な2時間となった。