現在海外5ヶ国に拠点を持ち事業を展開するなど「グローバル人材育成」という分野において急成長を遂げている企業「アルー」。そのアルー株式会社による特別セミナー「貫け、志 切り拓け、世界!」が1月29日、品川にて催された。

このセミナーは、企業の人事・人材育成の担当者が対象。スピーカーに各界で活躍する注目の人物を迎えるとあり、当日の会場には多くの参加者が詰めかけた。

セミナーは落合文四郎社長の挨拶からスタート。「昨今のグローバル化の流れの中、これからは自分の中に志を持ち、新しい価値を切り開く人材が必要なのではないでしょうか。今日は若く、熱い志を持ち、世界を視野に入れ実際に動いているお二人をお呼びすることが出来ました。こういう人材を組織の中で育てていくにはどうしたらいいのか? そういう視点から聴いていただけると、みなさんの中にいろいろな気付きがあるのでは、と確信しています」と語る。

「日本とアメリカの大学生の違いは教養。そのためには、古典を読むことが大事」と佐々木編集長

最初の講演は東洋経済オンライン編集長・佐々木紀彦氏による「信念を貫くという強み」。佐々木氏は現在現在35歳、2012年11月に東洋経済オンラインの編集長となり、サイトニューアル後わずか4ヶ月で月間5300万PVを記録したことでも話題となった。

現在の日経ビジネスオンラインのおもな読者層が20~40代であり、競合する日経ビジネスオンラインの読者層との差を分析し、ターゲットを絞ったメディアとすることで日本一のPVを実現した。

「メディア、教育、医療。この三分野が日本における最後のガラパゴス産業であり、デジタル化の波によりあと5~10年で急激な変化が訪れるはず。100年に一度のこの転換期に立ち会えた幸運を生かすためにも、日本の中に“新しいメディア”を作れるように頑張りたい。これが信念です」と佐々木氏。

また、自身が休職しスタンフォード大に留学していた時、アメリカの学生との圧倒的な「教養の差」を実感したのだという。その経験もふまえ、佐々木氏が思う新世代リーダーの条件は「教養・編集力・信念(ビジョン)」。

編集力に関しては「日本人は職人気質で、深堀りするのは上手いが、それだと横につなげていくことができない。編集とは“探して、つなげて、上手く見せる”ということ」。そして、人事こそが会社の中の“編集者”であるーーという言葉に、会場中が真剣に聞き入る。

「サッカーや野球が大企業なら、フェンシングは中小企業」と語る太田選手。オリンピック招致に関わったのもフェンシング界のためだったという

続いてのゲストスピーカーは、フェンシングの太田雄貴選手。2008年の北京、2012年のロンドンと2つのオリンピックで銀メダルを獲得したことは言わずもがな、東京オリンピック招致のプレゼンテーションでも活躍したことも記憶に新しい。

まずは司会者とのトークで、太田選手のプロフィールやフェンシングの基本的な情報を参加者に説明。太田選手の競技種目・フルーレはフェンシングの中でも競技人口が少ないマイナー種目だが、日本ではメジャーな種目であること。

フェンシングの競技者だった父親の「(フェンシングを始めたら)スーパーファミコンを買ってあげる」という言葉でフェンシングを始め、その後4300日間一日も練習を休まなかったというエピソード、現在普及活動として行なっている“スーパーフェンシング”の話題……普段なかなか聞くことができないオリンピックメダリストの生の声に、会場の熱も高まってゆく。

ひと通り自己紹介が終わった後、落合文四郎社長とファシリテーターとして元広告批評編集長・河尻亨一氏が登場。「フルーレが見た世界」と題した対談が行われた。 この対談のキーワードは「世界で活躍する人材とはどんな人?」また、「世界を視野に活躍していくにはどうしたらいいのか」ということ。まず、太田選手が五輪招致の際に行なった見事な英語スピーチの話題からトークはスタート。

実は太田選手、英語はもともと苦手なのだとか。実は7~8割のアスリートは英語ができない、なぜなら海外遠征の際も日本人の集団で動いているから。これでは英語ができるようになるわけはない。これからのグローバル化は、群れから「引きはがす」ことが大事だと思う……太田選手の言葉に、会場の参加者も大きく共感した模様だ。