予選結果
そんなわけで予選結果は、以下の通りとなった。
手動操縦部門
- 1位:Kite-50th(カイトフィフティー:神奈川工科大学 航空研究部) 1965点
- 2位:イーグル7(金沢工業大学 夢考房 小型無人飛行機プロジェクト) 1860点
- 3位:あかり(東京理科大学 理工学部 機械工学科) 1455点
- 4位:Fantasista_SSP(ファンタジスタエスエスピー:東海大学 工学部航空宇宙学科 航空宙学専攻) 1440点
- 5位:Tokai3.0(トウカイサンテンゼロ:東海大学 工学部航空宇宙学科 航空宇宙学専攻) 1400点
- 6位:サモリョーチカ(東京大学 工学部航空宇宙工学科) 1330点
- 7位:サテジス(帝京大学 理工学部航空宇宙工学科) 1100点
- 8位:Altair(アルタイル:東京都立産業技術高等専門学校) 1075点
自動制御部門
- 1位:PEGASUS(ペガサス:秋田工業高等専門学校) 4005点
- 2位:NAVIX-b(ナビックスブラボー:名古屋大学大学院 工学研究科 航空宇宙工学専攻) 3330点
- 3位:FLANGER(フランジャー:秋田工業高等専門学校) 2830点
- 4位:Golden Eagle-II(ゴールデンイーグルツー:秋田工業高等専門学校) 2575点
- 5位:T-sparrow(ティースパロー:鳥取大学大学院 工学研究科 機械宇宙工学専攻 機械工学コース) 2550点
- 6位:ポアソン(東京農工大学 工学部機械システム工学科) 2350点
- 7位:Shooter-acroII(シューターアクロツー:福井高専 電子情報工学科) 2310点
航空機の常識をひっくり返すをコンセプトにした秋田高専
予選で特筆すべきは、やはり自動制御部門の秋田高専の「PEGASUS」だろう(画像20)。4400点中の4005点は、100点満点に換算すると91点となる。PEGASUSのスペックは全長960mm×全幅1590mm×全高310mm、重量240g。コンセプトとしては、「航空機の常識をひっくり返す」だという。また、姿勢と高度の安定性を追求しており、それは昨年2位だった同校の「M-Revolution」という機体から引き継いだ「回転方向スタビライザー」によるものだ。強度を確保するためにトラス構造を採用しており、また速度を可変させられるようにも設計されているそうである。
見た目的な特徴は、プロペラが機体前方の上部にあるのだが、それを前方に向けてあるのではなくて、「安全性を考慮して」後方向きに取り付けてあるところ。プロペラ(レシプロ)機というと、ライト兄弟のライトフライヤー号から現代の軽飛行機まで、機体中央の先端に前面向きに取り付けられているイメージが強い。
しかし、プロペラは最後端にあっても機体を前進させる推力は発生させられるので問題なく飛行できるそうだが、前方にありながら後ろ向きというのは、あまり実機では見たことがない(実験機などではいくらでもあるのかも知れないが)。このスタイルは、ほかにも採用しているチームがあり、飛行ロボコンのレギュレーション上で安全性(エリア外に出てしまって観客などに当たってしまう可能性)のほかにも気流の安定性などの面でも有効なのかも知れない。
ちなみに秋田高専は2008年の第3回大会から出場しており、その年から優勝(当時は飛行機部門)し、そこから4年連続優勝(その内のワン・ツーフィニッシュ1回を含む)を成し遂げた(3機で出場することが多く、毎回決勝に全機残って、上位に進出している)。ただし、ここ2年ほどは優勝から遠ざかっているが、それでも2011年の第7回は3位、2012年の第8回も2位と、必ず表彰台をゲットしている。この予選の成績を見る限り、トラブルなどのイレギュラーが発生しない限りは、今年も間違いなく優勝候補筆頭だろう。
なぜこんなに強いのかについて、機会があればぜひ話を聞いてみたいところだが、きちんと前年の資産を引き継いでいるところがその要因の1つと思われる。学生チームが何年も同じ技術系競技会に参加する場合、どれだけ先輩たちが後輩にノウハウやデータなどの資産を継承できるかがポイントで、秋田高専はそこをしっかりとやっているようだ。
あとは、やはり秋田といえば、日本の「ロケットの父」である故・糸川英夫博士が日本初のペンシルロケットの垂直発射を行った「能代(秋田)ロケット実験場」(旧・宇宙科学研究所→現・JAXAの施設)が思い浮かぶわけで、飛行機とロケットではちょっと違うが、JAXAも飛行ロボコンは共催しているし、きっと心構え的には関係があるのではないだろうか。
カイト型を採用し、手動部門1位を獲得した神奈川工科大
そして手動部門の予選1位は、神奈川工科大の「Kite-50th」(画像21)。1965点と、100点満点なら73点というこちらも立派な成績だ。このKite-50thは、カイト(西洋凧)型(ハンググライダーなどと同様の、三角形の全翼機)をしているのだが、名称はそのカイトと、スペルは異なるが神奈川工科大の略称のKAITもかけているものと思われる。また50thは、同大学の前身である幾徳工業高等専門学校が1963年に開校してから今年で50周年ということを表しているようだ。またブログによれば、自動部門を目指していたそうだが、スケジュール的に開発が間に合わなかったため、手動部門に切り替えたそうである。
Kite-50thの特徴の1つが翼の面積の大きさで、そのため翼のアスペクト比(通常はアスペクト比というと、モニタなど長方形のものの長辺対短辺の比率を表すが、翼は長方形ではないことが多いため、翼の幅の2乗を翼の面積で割ったもので表す)を大きく取れたことから安定性があり、滑空時間も以前より1秒長くなっているという。ただし、ラダー(方向舵)が敏感な機体になってしまったそうである。
なお、同チームは第7回大会で秋田高専の5連続優勝を阻んだチームだ。手動と自動という部門分けは今年初めて行われたのだが、ライバルともいうべき両チームが別部門になってしまったのは少々残念である。来年ももし手動、自動の2部門で行われるのなら、ぜひ同じ部門で対決していただきたい。