モニターの基礎知識と導入事例
次に、EIZO 企画部 商品技術課の家永氏より、モニターの基礎知識について講演が行われた。
EIZOのColorEdgeシリーズは高画質IPS液晶を採用し、画面上の輝度ムラや色度ムラを抑えた均一な画面表示を実現する「デジタルユニフォミティ補正回路」を搭載している。専用ソフトと内蔵センサーによるハードウェアキャリブレーションで、安定的に適切な発色を維持できる。また、安定化回路導入により短時間で表示が安定するほか、目に負担の少ないノングレア液晶や可動範囲の広いスタンドなど、使い勝手にもさまざまな配慮がなされている。5年間の長期保証や修理時の代替機の無償貸し出しなどのサポートも、制作現場にとって安心して導入できる利点となる。
では、このような利点を持つ同シリーズは、クリエイティブの現場でどのように活用されているのだろうか。まず、トヨタ自動車における導入事例が紹介された。
カーデザインの現場におけるColorEdgeの利点とは?
同社では2004年よりColorEdge CGシリーズを導入し、塗料・デザインなど6部署で使用。国内外の営業部門や海外デザイン拠点でも、色の管理に活用している。内装・外装のデザインでは、ミリ単位の差異が画像で見て分かるように階調やライティングに注意を払うが、モニターがそれを表現できなくては意味が無い。また、車種ごとにカラーバリエーションが増える中、全色のモックアップを作ることは難しく、CGで補いながら検討を行っているという。ここでも色味や映り込み・ツヤ感の高精細な描画が必要となる。
トヨタ自動車におけるColorEdge導入 |
上が従来のモニタ-、下がColorEdgeでの表示。従来再現できなかった階調も表現し、デザインの意図が正確に伝わる |
クリエイターの意識の変化がカラマネ導入によるメリットにつながった |
該当部署のどのモニターでも等しく色を出せるのは、コスト面でもクオリティ面でもメリットがあった。中でも、導入後の効果として大きかったのは、クリエイターの色管理に対する意識の変化だという。湯本氏は「色の管理も自ら行わなくてはならないという意識が、工数削減や品質向上につながったのではないか」と述べた。
映画『キャプテン・ハーロック』制作にも活躍したColorEdge
続いて、マーザ・アニメーションプラネット システム管理担当の杉田直弥氏より、カラマネの低コスト運用について事例が紹介された。
同社はCGアニメーションを中心に映像制作を行っているが、従来使用していたソフトウェアキャリブレーションで適正な数値が取れていないことが発覚。これをきっかけにカラマネの再構築を行うことになった。さまざまな要件からCG275W(現行のCG276の前機種)の導入を検討するに至った。
検討の結果、同社ではCG275Wを55台導入した。通常のモニターだと、55台を月に1回キャリブレーションする時間を1台あたり1時間と想定すれば、およそ55時間、年間660時間かかり、作業のための教育も必要になる。加えて、色が合わないことでミスが起きればロスにつながり、デザイナーやディレクターの負担も増える。杉田氏はこうしたコスト面での利点を提案することで、導入を実現した。今後はUnix上での10bit表示対応や、ポスプロとの色管理共有なども検討しているという。セミナーの最後には、同社が制作を手がけた9月7日公開の映画『キャプテンハーロック』や、セガの音楽ゲーム「初音ミク-Project DIVA-」が動画で紹介された。
クリエイターの制作業務を"正しく"サポートする「カラマネ」
今回のセミナー全体を通じて、カラマネ導入による品質向上や効率化の利点が伝わる内容となっていた。しかし、クリエイターにとってはそれ以上に、「自分が今作っているモノが、実は正しく見えていないかもしれない」という危機感が感じられたのではないだろうか。これまでカラマネを知らなかった人、敬遠していた人にも、難しいと思われがちなカラマネを基礎から理解できる貴重な機会だったと言えるだろう。