スマートデバイスを売り上げに貢献するツールとすべし
セッション2では、TIS 産業事業本部 産業ソリューション推進部の吉原敬史氏が、「ビジネスを動かすのも、指一本。モバイル活用の具体例とモバイル中心にビジネスを再設計する方法」として、デモを交えて4つのモデルケースを用い、モバイル活用の具体的なイメージを紹介した。
まず吉原氏は、TISが提供するマーケティングソリューション「TECHMONOS(テクモノス)」について触れた。スマートフォンやタブレットなど、急速に進化するデバイスと同様に、ユーザー/顧客とコンタクトをとる環境も多様化し続けており、なかなか効果的なマーケティングやセールスを実践できないのが現状だ。ユーザーの動向やニーズを"クモの巣"を張るように収集・分析し、売るための仕組みを提供するのが、本ソリューションというわけである。
TIS 吉原敬史氏 |
こうしたユーザー環境の変化に対する売るための施策として、吉原氏が提案するのは、スマートデバイスを売り上げに直結するツールにすることである。売上を伸ばすには、オフライン(実店舗・営業現場・POS)でもオンライン(Webサイト)でも、できるだけ多くの情報をリアルタイムに収集し、ユーザーの立場から分析することが重要となる。中でも吉原氏が着目するのは、スマートデバイスをオフラインの環境で活用することだ。
企業におけるスマートデバイスの活用は、多くの場合、メールやグループウェアを活用する第一段階(導入期)、またはリモートアクセスやカタログを活用する第二段階(利用拡大期)であり、業務効率化が主な目的であるという。今回紹介された4つのモデルケースは第三段階(社内システムとの融合)に当たり、売上に貢献するモバイル活用の事例だ。
「店舗販売」のケースでは、ソフトバンクモバイルの芦澤氏も紹介した電子カタログが例としてあげられた。吉原氏は、これでもまだ足りないと述べ、バックオフィスと連携してリアルタイムで商品の価格や在庫情報を提供できれば、その場で商談を成立することも可能になると主張する。
それを実現するのが、電子カタログ・商品DB連携ソリューション「PIT MIRU for TECHMONOS Mobile+」だ。商品DBと電子カタログを連携し、見積書の発行も行うことができる。吉原氏は、iPadを用いて顧客にバラの花束のギフトを提案し、その場で注文まで行うシーンのデモンストレーションを行った。
TIS 松岡正芳氏 |
2つ目のケースは、「訪問販売支援」のシステムだ。訪問販売事業を展開しているある企業では、モバイルシステムが老朽化しており、機能追加の開発コストが肥大化しているという問題があった。そこでTISが提案したのは、汎用的なスマートデバイスを用い、将来的にも有用な開発基盤を構築することだった。
まず第一弾の端末として採用されたのは、iPod Touchだ。低価格で、使いやすく、訪問の際に目立つカラフルな筐体もよい。将来的には3G/LTE等の活用も検討しており、iPhoneなどへの移植が容易であることも決め手であったという。
3つ目に紹介されたのは、「生命保険設計支援」のシステムである。生命保険という商品は特殊で、高額かつ高度で、さまざまな個人情報を取り扱う必要があり、事前説明や本人確認など実行しなければならない業務が複雑であるという問題を抱えている。そのため、顧客とのコミュニケーションを円滑にするツールとして、モバイルへのニーズは高いそうだ。
TIS 福岡敬真氏 |
TISの提案するソリューションでは、顧客の管理や保険プランの提示など、これまで紙を中心に行なってきた業務をiPadに集約することができる。中でも特徴的なのは、必至となる事前説明などを自然な発声に近い音声合成で提供できることだ。テキスト原稿をリアルタイム変換するため、規定を変更した場合などでも容易に対応することができるという。
4つ目は、メンテナンス業務支援サービス「EXMAINTE(エックスメンテ)」を活用した「施設点検管理支援」の事例だ。ある調査によれば、ビルの保全業務は業界全体で増加傾向にあり、かつ難度も増している状況にある。一方で、保全業務を行う技術者の育成という課題が残されているという。
TISが提供するEXMAINTEは、得てして属人的になっている保全業務の現場ノウハウや履歴をスムーズに共有・継承することができるサービスである。また、保全業務の計画から実施・報告、改善までの管理業務をトータルにサポートする機能も備えている。デバイスのカメラを活用した写真・動画による情報共有や、音声読み上げ/入力やARを活用した作業確認といった機能も、作業を効率的に進めるために有効だ。
TIS 西部一英氏 |
吉原氏は、モバイルが社内システムと深く関わるようになるため、現場とシステム部門との連携が重要になると述べる。従来のようにビジネス現場主導、あるいは現場だけで開発していたのでは、システム連携だけでなく、オフライン時やデバイスの対応、セキュリティ対策などの課題が残される。
「現場が実現したいこと」と「システム上考慮しなければならないこと」は直結するものである。全体的なセキュリティ対策を考慮し、効率的に開発を進め、運用サイクルに載せるためには、現場の個別対応には限界があり、システム部門が主体となったモバイル開発の基盤づくりが重要であると締めくくった。
安心・安全・効率的なモバイルアプリケーション基盤を活用しよう
日本アイ・ビー・エム 尾山滋則氏 |
最後のセッションでは、日本アイ・ビー・エム ソフトウェア事業 WebSphere事業部の尾山滋則氏が、「安心安全で効率的な開発を実現するモバイル・アプリケーション基盤」と題する講演を行った。
尾山氏は、モバイルの普及でユーザーのライフスタイルに大きな変化が現れていると述べる。例えば「タブレットを活用するユーザーは、PCユーザーに比べて、20%以上も長い時間ショッピングを続ける」という調査結果もある。スマートデバイスによってユーザーはますます賢くなり、要求もますます厳しくなっているという状況に対応しなければならない。
このためには、「モバイルファースト」を徹底することが重要だと尾山氏は主張する。モバイルをユーザーのメインツールとして考えて、サービスやWebサイトを設計・デザインしなければならないという考え方だ。
問題となるのは、複数のプラットフォームに展開されるモバイルアプリを、いかに効率的に開発し、適切に運用していくかということだ。開発スキルやエンジニアの獲得、多様化するデバイス/OSへの対応、配布や維持の管理、セキュリティ、社内システムとの連携など、課題は山積みである。
これらの課題を解決するための仕組みとして注目されているのが、一般的に「MEAP(Mobile Enterprise Application Platform)」と呼ばれるモバイルアプリケーション基盤である。多様なデバイスの違いを吸収し、モバイルアプリを一元管理し、ほかのシステムとの連携を果たすことができる。
IBMが提供するMEAPソリューション「IBM Worklight」には3つの利点がある。まず1つはオープンであり、既存の開発スキルと資産を有効活用できる点。2つ目はシステム環境が適切に管理・統制できる点、3つ目はほかのシステムとの強力な連携が図れる統合システムである点だ。
IBM Worklightでは、Webアプリケーションとネイティブアプリケーションを融合したハイブリッドアプリケーションを開発できる点が特徴的だ。HTML5やCSS3といった再利用可能なWeb技術を活用しつつ、カメラや位置情報システムといったデバイス依存の機能も利用できる。
アプリの改ざん防止やキャッシュの暗号化、自動更新や利用制限、認証といった管理・セキュリティのシステムも充実している。ほかのシステムとの連携は、各種アダプターが用意されており、標準ではSQL、HTTP、JMS、CastIronを利用することが可能だ。
韓国のロッテ・カードでは、ネイティブアプリの開発が高価になり、アプリ開発のスキルもないという課題があった。IBM Worklightによるハイブリッドアプリの開発を採用して課題は解決、PCからでも同じアプリを利用できるというメリットも得られた。国内のある都市銀行では、既存のインターネットバンキングと開発資産を活用しつつ、低コストで拡張性の高い新アプリの開発に成功した。
関連情報
■ソリューション
- TECHMONOS : http://www.tis.jp/branding/techmonos/
- EXMAINTE(点検業務): http://www.tis.jp/service_solution/exmainte/
■イベント
- IBM Impact2013 7月18日 品川プリンスホテル
http://www-06.ibm.com/software/jp/websphere/events/impact2013/- SoftbankWorld2013 7月23-24日 ザ・プリンスタワー東京
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