近年、スマートフォンやタブレットが普及し、業務で利用するケースも多くなっている。これらのデバイスを業務で利用しようと社内ネットワークに接続するには、無線LANの構築が必要だ。最もシンプルに無線LANを構築するには、アクセスポイント(以下、AP)を導入する。APを有線LANに接続し、SSIDやユーザ認証などの設定を行えばよい。ただ、クライアントの数が多かったりフロアが広かったりなど、アクセスポイントが複数台必要になってくると、アクセスポイントの管理が煩雑になってしまう。そんなときに効果を発揮するのが無線LANコントローラだ。
ネットギアは、日本でも無線LANコントローラ「PROSAFE ワイヤレスLANコントローラ WC7520」の販売を開始した。無線LANコントローラのメリットとネットギアの無線LANコントローラ「WC7520」の特徴を紹介しよう。
無線LANコントローラの概要
無線LANコントローラとは、複数のAPを一元管理する機器だ。無線LANコントローラとAPの接続は、製品にもよるが、直接接続する必要はない。ともにレイヤ2スイッチなどを介して有線LANに接続し、無線LANコントローラとAP間でIP通信により制御情報をやり取りできるようにすればよい。
また、無線LANコントローラの管理対象となるAPは、一般的には「Thin AP」と呼ばれる。「Thin」とは日本語では「薄い」という意味だ。Thin APは通常のAPに比べると機能的に「薄く」なっている。通常のAPは、Thin APに対して「スタンドアロンAP」や「自律型AP」などと呼ばれ、データを無線LANの電波にのせて乗せて送受信するという機能に加えて、ユーザ認証やAP自体の管理などのさまざまな機能の処理も行う。一方、Thin APは、データを無線LANの電波に乗せて送受信という機能に特化している。無線LAN電波の送受信以外の、チャネル、SSID、ユーザ認証や暗号化方式といったさまざまなAPの設定はすべて無線LANコントローラで行う。また、各APの電波状況や接続しているクライアントの情報などAPの状態をリアルタイムでモニタリングできる。いわば、Thin APは単なるアンテナだ。無線LANコントローラとThin APを利用すると、有線LAN経由で拡張可能なアンテナを持った無線LANネットワークを構築できる。
無線LANコントローラのメリット
無線LANコントローラを導入することで、無線LANネットワークの構築と管理において主に次のようなメリットがある。
- APの設定を一元化
- 無線LANカバレッジの柔軟な管理
- 無線LANクライアントの高速ローミング
- 無線LANクライアントの負荷分散
APの設定を一元化
スタンドアロンAPは、それぞれ設定が必要だ。APの台数が少ないうちはたいした作業ではないが、APの台数が増えてくると大変だ。無線LANコントローラ環境では、すべて無線LANコントローラで設定すればよい。無線LANコントローラで設定したチャネルやSSID、ユーザ認証方式、暗号化方式などが自動的にAPに転送される。そのため、たくさんのAPがあっても、その設定の負荷を少なくすることができる。
無線LANカバレッジの柔軟な管理
無線LANで通信できる範囲をカバレッジと呼ぶ。電波の到達範囲は、フロアの広さや遮蔽物の存在、壁の材質などさまざまな要素によって変わってくる。そのため、無線LANの構築・運用上、カバレッジの確保はとても難しいものだ。無線LANコントローラ環境では、コントローラでAPの電波状況をモニタリングし、チャネルや電波出力を制御できるので、柔軟なカバレッジ管理が可能となる。あるAPに障害が発生しても、周囲のアクセスポイントの電波出力を大きくしてカバレッジを維持することも可能だ。
無線LANクライアントの高速ローミング
スマートフォンやタブレットは使いながら移動するケースが多いだろう。すると、接続するAPの切り替え、すなわち、ローミングが発生することがある。スタンドアロンAPでもローミングは可能だが、切り替え先のAPでの再認証が必要となり、通信が切断されることがほとんどだ。それに対して、無線LANコントローラ環境であれば、ローミングして接続先のAPが変わっても再認証が不要で通信が切断されることがない。
無線LANクライアントの負荷分散
1台のAPに接続するクライアントは、電波を共有して通信することになる。そのため、1台のAPにあまりにも多くのクライアントが接続すると、それぞれのクライアントの平均スループットは低下することになる。無線LANコントローラ環境では、1台のAPにクライアントが集中しないようにAPの負荷分散を実現することも可能だ。