-- Windows 8発売時点での樋口社長のコメントを振り返ると、「ユース(若者)」向けの施策や、「クール(洗練)」なイメージを打ち出したいと言っていましたね。これがなかなか響いてこない感じがあるのですが・・・
樋口 クールであり、シンプルさを打ち出した方が求められているという状況には変わりがありません。ただ、クールさという点では、Windows陣営はもっと頑張らなくてはならないとは思っています。そうしたなかでの活性化材料のひとつとして、Surfaceの存在がありますし、他のPCメーカーからも、若い人たちにリーチするような製品が登場することを期待しています。これから売り場にも、そうした製品が数多く出てくるのではないでしょうか。
-- Windows 8が、PCの販売台数の増加に直結していないという見方も出ていますね。
樋口 実は、エコポイント制度で得たポイントを使用できる期限が2012年3月31日までとなっていたことで、1年前の2012年1~3月には、これを使ってPCを購入する人が多かったという特別な状況がありました。その分を考えると、Windows 8発売以降のPC販売には、一定の成果が出ていると考えています。また、「Windows 8=タッチ」ということを今後定着させる上で、タッチパネルの供給状況が改善し、春商戦ではタッチパネル搭載PCの販売比率が上昇してきている点も心強いと思います。私は、将来的にはすべての製品がタッチ対応になると考えていますが、そうした提案を本格的に加速できるようになります。さらに、PCメーカー各社から、Windows 8を搭載したPCのラインアップが広がりをみせるのに加え、今後はインテルからタブレットに最適化したCPUも登場することになります。いよいよインテルが本気になって(笑)、タブレット向けにCPUを投入してくるわけですから、これによって、タブレットがより高速化し、競争力も高まる。これからはもっともっと市場が盛り上がりを見せることになるでしょう。
-- 企業向け市場における反応はどうでしょうか?
樋口 企業において、新たなOSを導入するには、実機を手に入れて、検証行い、その結果、本格導入を検討するといように、どうしてもリードタイムがかかります。しかし、これまでの半年間の取り組みを振り返れば、決して手応えは悪くありません。企業ユーザーからは、タブレット端末における企業ITシステムとの連携性、セキュリティやマネージャビリティを重視するという点で、選択肢はWindows以外にはないといった声も出ています。タブレットに最適化したOSの投入という意味では、企業ユーザーには、2年以上待っていただいたわけですし、Windows 8の発売以降、他社製OSを搭載したタブレット端末の導入検討をストップしたという企業もあります。コマーシャル市場に対して、Windows 8のメッセージが響いているという手応えを感じています。
-- Windows 8では、昨年11月の時点で、16の企業や組織が早期導入を表明していますが、Windows 7やWindows Vistaの発売時に比べると、なかなか具体的な事例が出てこないという感じも受けますが・・・
樋口 Windows 8では、インタフェースが大きく変わり、タブレットユースという新たな用途が出ていますから、それに少し時間がかかっているのかもしれません。ただ、私自身は、それほど遅れているという感じはありません。企業向けの提案という意味では、この半年間を振り返って、自己採点で80~90点ぐらいの点数にはなると思っています。
-- 2012年11月に、NTTドコモと企業向けタブレット市場の開拓を目的とした協業を発表していますが、この成果はどうですか?
樋口 これはうまく行っています。この協業は、NTTドコモのXi(クロッシィ)とWindows 8搭載タブレットとの組み合わせによって、共同での顧客開拓や、共同プロモーションなどを展開していくものですが、ドコモのブランドによる安心感と、Windows 8の登場を待っていた企業ユーザーへの導入提案が進んでいます。小売店舗における営業端末や在庫管理端末として、また保険業界における対面販売用の端末としてタブレットを活用するといった提案が出ていますが、それに留まらず、今後は、あらゆる業種に向けて提案活動を進めていきたいと考えています。
-- Windows 8のビジネスにおいて、解決すべき課題はありますか?
樋口 とにかく製品そのものをしっかりと訴えることが必要であり、それを抜きにマーケティング活動はできません。そして、Windows 8の良さをお伝えするには、Surfaceもひとつの提案だといえます。Windows 8およびSurfaceに関しては、この春商戦でも過去最大の広告宣伝費を投下しましたし、もっとアクセルを踏んでいきたいと思っています。まだまだこれからです。
-- 2013年3月15日には、マイクロソフトブランド初のタブレット端末であるSurface RTを発売しました。この手応えはどうですか?
樋口 上位モデルはすぐに品切れになるなど、3月15日の発売から3日間のSurface RTの販売台数は、予想以上のものとなりました。就職や新学期需要のタイミングにあわせて若い人たちの反応がよく、女性層の購入も多いという傾向が出ています。なかには、なぜ、日本ではピンクのTouch Coverを出さないのかというお叱りも受けています(笑)。後発であるということを考えると、想像以上の手応えだといえます。現時点でのSurface RTの売れ行きを見ていますと、半分ぐらいがタブレット端末としての販売であり、残り半分がTouch CoverやType Coverといったキーボード付きカバーとのセット商品を購入する人です。きっと、あとから購入した人もいるでしょうから、結果的には、半数以上の購入者が、キーボード付きカバーを使用していると考えられます。
-- ところで、Windows 8を搭載したSurface Proの日本での展開はどう考えていますか?
樋口 具体的なことは現時点ではお話しできませんが、一般論として、これだけ進化が激しいIT産業において、ひとつの製品を出して終わりということは考えにくいのは当然です。お客様にご愛顧いただいている製品を、次の形に進化させていくということは大切なことでもありますし、シリーズとして展開していくことが一般的な考え方ではないでしょうか。すでに、米国、カナダでは、Surface Proを製品化しているわけですし、そこから投入に時間差があると、製品そのものが陳腐化しますからね。Windows 8は既存アプリケーションとの親和性がより高いものですから、企業においても、既存のソフトウェア資産を動作させるには適しています。Surface Proは、米国でも企業ユーザーから高い評価を得ている製品であり、私は、Surface RTと、Surface Proの製品コンセプトは、棲み分けがかなりクリアだと思っています。私自身も、Surface ProとSurface RTの両方を使っています。