急成長達成に向けて、目標はどこに設定されていたのか


――月に12億PVを超えるほどの人気となった「NAVERまとめ」ですが、12億PVを超えて思うことはありますか? またサービス開始時の目標PVはどれ位でしたか。

島村 : 12億PVは、「ここまで来れた! 」という達成感もありますが、それと同じくらいの「ここまでこれて当然」という感覚もあります。

満足している面もありますが、まだまだ満足できないし、不満感は常に持っています。それでも、現時点の立ち位置に不満はない。そういった感情ですね(笑)。

サービス開始時の目標についてですが、特に明確に定めたものはありません。PVはあくまでも基準の1つなので、それよりも「皆が新しい検索のサービスとして可能性を感じる状態にしたい」という思いのほうが強かったです。

サービスを立ち上げるには、自分たちが、「こうありたい」、「この時点ではこうなっていたい」と考えることが必要です。その状況に到達できるのは1000PVかもしれないし、100億PVかもしれない。当時はそんな感覚でしたね。

ただし、長い間運営を続けていくにはマイルストーンが必要です。その設定指針としては、絶対に届かない場所ではなく、工夫をすれば届くかもしれないと思えるところに置くことがポイントでしょう。一方で、長期目標に関しては、比較的高いものを設定しなければなりません。例えば――数字の例えで恐縮ですが、12億PVを達成し、次の目標を30億PVにしたとすると、30億に向けて全力を尽くすことになり、目標が近くなると所々にヒビが入ってしまいます。しかし、1000億PVを目標としていれば、30億PV付近で細々とした施策を展開することなく、大きな視野で"体幹"を強くする方に注力できるはずです。

――サービス開始当初にPV数が減ったり、伸びなかったりした際に、何か対策を行いましたか。

島村 : 目標に向かって"助走"する期間などには、PV数が減ることはあります。高くジャンプするのと同じで、高くジャンプするためには、深くふんばることが必要です。このときにPV数が減ったとしても、それは大局的な目で見れば仕方がないと考えていました。

ただし、何の説明もなければ周囲は理解してくれないので、関係者、特に事業を支援する経営陣には説明しておく必要があります。この際に大事なのは、自分たちが作っているものをイメージしてもらうことです。

例えば、大きな建物を作るならしっかりした土台が必要ですが、土台の時点で建物の完成像をイメージできる人は多くありません。知らない人が見れば、「一体何をやっているんだ」となるでしょう。しかし、「我々はブルジュ・ハリーファのような世界一の建物を目指しています」と伝えれば、相手も考えを変えるはずです。土台作りに時間がかかるのは当然だと考える方も多いのではないでしょうか。

そのためにも、「こうありたい」という理想像はしっかり作っておく必要があるんです。

――今後、「NAVERまとめ」をどのようにしていきたいと考えますか。

島村 : ユーザーが楽しく使える場にしたいというのは前提にありますが、それとは別に、専門知識を世の中に役立ててもらう場、知見を交換できる場としたいですね。

有用な知見や情報源を持っていて、それを世に出したいと考えている人でも、まとめを作る時間がない人もいるかもしれません。そういった人たちの知見をどう取り込んでいくかというのは課題ですね。

それと、先ほど不正について話をしましたが、『不正を取り締まる=規制を強める』ということではありません。規制をすることが正ではないし、しないことが正でもない。運営側としては、ルールでがんじがらめにすれば管理が楽になりますが、そのことで無実の人を苦しめることなるケースもあるので、締め付けるようなことはしません。決めつけず、常に状態を気にかけ、流動的に動いていきたいと考えています。

ユーザーは我々運営がどんなに考えても思い浮かばない発想や気づきを与えてくれます。ユーザーが知りたい情報を知っているのはユーザーだし、たくさんの人が集まることで生まれる発想もあります。我々は答えを知らないということを自覚し、ユーザーがもつ力をどう引き出すかが重要だと考えています。

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月のPV数が10億を超えた「NAVERまとめ」が、どのような考えの下に運営されてきたのか、少しでもわかっていただけたであろうか。「まとめインセンティブプログラム」を2013年1月1日に全面刷新するなど、継続的に改善を重ねる「NAVERまとめ」にこれからも注目していきたい。