インセンティブプログラムが果たした役割
――まとめページ制作者にバナー広告の収益を分配する「インセンティブプログラム」を導入したのは大きな変化だったと思うのですが、導入後、ユーザー数が大きく増えたりしましたか。
島村 : インセンティブプログラムを取り入れたことは大きな転換点だったとは思いますが、その時点で劇的に変わった、爆発的にユーザー数が増えたということはありませんでした。ただし、「NAVERまとめ」の歴史を俯瞰して見ると、大きな影響があったと言えるのかもしれません。
というのも、インセンティブプログラムを採用して以降、新たな施策や機能強化に対する反響が大きくなりました。インセンティブプログラムはある程度注目を浴びたので、認知度が大きく向上したのだと思います。今振り返れば、爆発的な効果をもたらした施策というよりも、ほかで仕掛けたスイッチが活かせるようになった施策という感覚ですね。
事業を行ううえで何でも共通するのかもしれませんが、やはり、一発の施策で劇的に状況を変えるというのは難しいのだと思います。ユーザーの動向や市場の反応などのデータを細かく見ながら対応を重ねていって初めて結果につながるのではないでしょうか。
――インセンティブプログラムに関して注意していることはありますか。
島村 : インセンティブプログラムに関しても改善を重ねています。
スタート当初は、毎月の全広告収入をまとめページ制作者で分配するかたちをとっていました。分配金額は、まとめページのUU数や”重要さ”などを加味して付与するポイントに応じて決まるのですが、広告収入の額は毎月変わるので、ポイントからお金への換算レートも毎月変動していました。それに対して、現在は、「NAVERまとめ」を事業化しているので、広告収入にかかわらず、固定レートで換算しているかたちです。
インセンティブプログラムの肝は、単純にPVやUUに比例したポイントシステムにしていない点ですね。PVやUUはデータの一部であり、指針の1つとしては考えているのですが、それがすべてではありません。最初にお伝えした通り、「NAVERまとめ」のコンセプトとしては、人による評価を通じて良質なコンテンツにたどりつけるようにすることですので、それが反映されるような体系にしてあります。
満足度を測る指標としては、Facebookの「いいね!」ボタンなどがありますが、『「いいね! 」の数=満足度』とは単純に考えていません。「いいね!」には「いいね!」の特性があるので参考値としては有効ですが、それをすべてとするのは危険だと思っています。滞在時間に関しても同じです。『滞在時間が短い=面白くない』と考える方が多いかもしれませんが、『滞在時間が短い=読みやすい』かもしれない。数字の価値を慎重に捉えるようにしています。
また、アクセス数に関しても、均一には評価しないようにしています。それは、トラフィックを稼いでいるページが必ずしも良いまとめとは限らないからです。
例えば、一部の専門家にとって非常に有用なまとめページがあったとしましょう。専門家向けなので見る人も限られると思います。したがって単純にPVやUUで価値を測ってしまうとものすごく低い評価になってしまいます。そうなると、作る方は、ひたすらゴシップネタを追及したほうがよいという結果になってしまいますよね。世の中にとって有用なまとめページであれば、相応の評価が得られないといけないというのがサービスのコンセプトですので、それが反映される仕組みにしています。
ちなみに評価指標については、企業秘密です(笑)。そのロジックも日々改良を重ねています。
――インセンティブプログラムで実際にお金を稼いでいる人はどれくらいいるのでしょうか。
島村 : 数千円から数万円まで、人によって様々です。最高では月に50、60万円を稼いでいる人もいます。
人数については、詳しく明かせませんが、数千人規模ということろでしょうか。何かをアウトプットして、それが評価されてお金を稼ぐ人を「プロフェッショナル」というのならば、「NAVERまとめ」のプロフェッショナルは割とたくさんいらっしゃることになりますね(笑)
<……後編に続く>