リーダーとサブリーダーに話を聞く

Q:まずは何はともあれ、優勝おめでとうございます。今回は9人体制、斎藤さんも含めれば10人という体制で挑まれたわけですが、とても大所帯ですね。

堀江氏(以下、敬称略):前回までは制御第1技術部が中心となって参加していましたが、今回は多くの部門に声をかけた結果、さまざまな部門から集まりました。結果的に大所帯になりましたが、例年に比べて今回はたまたま参加したい人が多かったようです。ただ、9人全員がフルで活動していたわけではなく、活動できる人ができない人を補いながら取組んできました。実は今日のチャンピオンシップ大会も入社1年目の3人が工場実習の期間と重なったため、参加していません。東海地区大会の時は塚本君が工場実習中でした(画像4)。

画像4。今回のHELIOSを率いた堀江佑太氏。チームの名を引継ぐことはさぞかしプレッシャーだったことだろう

Q:人員をそろえるという点も大変だったわけですね。それでは、そのマネジメントを担当したリーダーの堀江さんに、優勝の功労者としてのお話を伺いたいと思います。リーダーとしてチームを率いて、どうでしたか?

堀江: マネジメントしなくても、メンバー全員がしっかり動いてくれたこともあり、マネジメントらしいマネジメントをした気がしないんです(笑)。また、これまでETロボコンに参加してきた先輩たちが折に触れてアドバイスしてくれたこともあり、孤軍奮闘していたということはありませんでした。予算管理などもしましたけど、すでにETロボコン用に確保されている予算の中で、「今月はこれだけ使います」と、使いたい時に許可を得るだけですので、難しい管理はありませんでした(笑)。

Q:そうはいっても、ETロボコンはほぼ1年間にわたってイベントが続きますから、ちゃんと予算配分を考えていかないと難しいですよね。そこはしっかりマネジメントできていたのではないでしょうか。

堀江:結果的には予算内で収まりましたので、マネジメントできていたといえばそうなのかもしれません(笑)。

Q:「俺がマネジメントをやってやる」みたいな人がマネジメントすると、チームが崩壊してしまうといった話はよく聞きますよ(笑)。堀江さんのそのスタンスだから、よかったんじゃないですかね。

堀江:リーダーがガンガン引っ張るような感じではなく、結構みんながやりたいことをやり、わからないところがあれば先輩も後輩も関係なくすぐに聞いたり教えてもらったりして、お互いに助け合っていました。

Q:今回のHELIOSのチームとしての強さがこの団結力の強さというところなんでしょう。それでは次にサブリーダーの今さんにお伺いします。モデリングを担当されたわけですが、どうでしたか?

今氏(以下、敬称略):モデリングは、みんなが協力してくれて初めてできる作業なので、メンバーには本当に感謝しています。ほかのメンバーの協力がなかったら、ゴールドモデル(モデル部門2位)という結果は出せなかったと思います(画像5)。

画像5。サブリーダーの今隼太氏。モデルを担当した

Q:HELIOSは、この5年で総合優勝3回という結果もすごいですが、部門別に見ると、モデル部門は09~11年は3連覇していますね。この伝統は、かなりプレッシャーがあったのではないですか?

今: 確かにプレッシャーは感じていましたが、逆にやりがいに繋がっていましたね。先輩たちが築きあげてきた伝統の重みもヒシヒシと感じていました(笑)。

Q:これまでのノウハウは、チームとして社内に当然残されているわけですよね? そういうアドバンテージがある一方で、万が一表彰台を逃したりすると…(笑)。

今:エクセレントこそ取れませんでしたが、ゴールドを取れて正直ほっとしています。

Q:ちょっと意地悪な質問ですが、そのエクセレントモデルを取れなかった点に関してはどうですか?

今:エクセレントを逃したことは残念ですが、2年連続の総合優勝を飾れたのでよい結果が残せたと思っています(笑)。今回はエクセレントモデルの3連覇を達成したベテランがチームを抜けましたので、正直なところ、若手だけでどこまでやれるか不安でした。

堀江:彼はモデリングに関してほぼ初心者だったので、私としてはとても健闘してくれたと思っています。

Q:これまでのノウハウが社内に残っているにしても、それらを継承するというのはまた別のスキルが必要になりますよね。そういう点でも苦労があったのではないかなと思います。

今:そうですね。これまでのノウハウを活かすために知恵を絞るのが大変でした。何はともあれ、報告できる順位であったことに今はほっとしています(笑)。

Q:でも本当のところは、エクセレントを取れなくて、悔しいんじゃないですか?

今:もちろんそれはありますけど、個人的にはまだまだだなと痛感しています。大会の会場内に掲示してある他のチームが描いたモデルを見て、これがNO.1だと思っていたチームのモデルがエクセレントではなかったので、まだまだモデルを見る目が足りないな…、と思いました。

Q:それは必ずしもモデルを見る目だけではなく、審査員の方たちとの好みの違いもありますよね。ですので、もしかしたら、チーム間投票をしてもらうと面白いかも知れないですね。

堀江:確かに、審査員の方たちによってモデルの好みはそれぞれ違いますね。

Q:現状のA3用紙5枚+プレゼン用紙1枚では、もうちょっと読みやすい文字のサイズで書き込みたいけどスペースが足りてないという状況ですよね。

今:描きたいことはたくさんあるので枚数的には足りてないです(笑)。でも、これ以上枚数を増やすと、審査員の方の負担が大きくなりますから、適度な枚数なのかもしれません。聞くところによると、今でも多くの審査員によって深夜までモデルの審査をしているということですから、これ以上を求めるのは無理だと思います。描くスペースがなくなってきたら、省略できるところは省略するなどして、しっかりと描き込むところと描かないところのメリハリをつけています。こういったバランス感覚が重要になっていくだろうと思います。このあたりの対処法もこれまでに蓄積されてきたノウハウなんです。あまり詰め込んで描いても読みにくければ減点となってしまいます(笑)。それから、HELIOSは毎年新しいキーワードを入れて描いています。このようにして審査員の方に訴求するポイントを明確にすることも重要ですね。

Q:省略の仕方にもセンスが必要だし、新しいものをうまく取り入れていくというのも重要で、なおかつ書き込む量のサジ加減と。しかし、毎年CS大会でもモデル部門の上位に位置していると、真似されてしまいそうですが、どうですか?

斎藤氏(以下、敬称略):真似されるぐらいのモデルを描けたら素晴らしいことだと思います。ただ、省略の仕方にはセンスが求められますから、そう簡単にすべてを真似するというのは難しいでしょうね。

Q:それにしても、現在のモデルに求められるクォリティは、ETロボコンの初期の頃に比べると格段にアップしているかと思います。新人でチームに入って、いきなり要求されるレベルがとても高いというのは、なかなか大変ではないでしょうか。

斎藤:そうですね。大会で求められるクォリティは年々高くなっているので、今後10年、20年とETロボコンが続いていった時に、どれだけ過去の資産を上手く引き継げていけるかが、より重要になっていくと思います。