Top500 BoF
Top500は6月のISCと11月のSCというスパコン関係の学会とあわせて発表され、SCではBoF(Birds of a Feather:同じ羽の鳥が集まることから、同好の士の集まりという意味)というセッションが設けられ、スパコンの傾向などの分析が行われるのと同時に、トップスパコンの表彰が行われる。
主催者のHans Meuer教授は、Top500はLINPACKというベンチマークプログラムの実行性能による順位づけであり、それ以上でもそれ以下でもない。スパコンの性能の1つの側面だけを測定するものであるという非難があるが、多次元の連立1次方程式を解くLINPACKというプログラムを選択したことが、この20年間に1兆倍もの範囲の性能レンジの測定を可能にし、Top500が40回も続いた理由であると述べた。
今回は40回(20年)という節目にあたるので、1993年6月からの歴代の1位マシンを紹介するパンフレットがTop500 BoFの出席者に配られた。
この表にみられるように、Top500で1位を占めたシステムは15システムしかない。そして、それを開発した国は米国、日本、そして中国の3カ国だけであり、メーカーとしては、米国はThinking Machines、Intel、IBM、Cray、日本は富士通、日立、NEC、そして中国の国防科技大と8つしかない。やはり、Top500で1位になることは、大変であり、名誉なことである。
今回のTop500 BoFでは1位となったTitanが設置されているORNLのJeff Nichols博士と、Titanを作ったCrayのPeter Ungaro社長、アクセラレータのK20Xを供給したNVIDIAのJen-Hsun Huang社長が表彰された。
1位のTitanチームの表彰。左から、主催者のMeuer教授、Dongarra教授、そしてORNLのJeff Nicholas氏、NVIDIAのJen-Hsun Huang President & CEO、CrayのPeter Ungaro President &CEO |
続いて、2位のSequoia、アジア地域1位の京コンピュータ、ヨーロッパ地域1位のJUQUEENの表彰が行われた。
Top500システムの傾向
この図に示すように、1位システムの性能(中間の線)は階段状でデコボコが見えるが、1~500位の全システムのFlops値の合計と500位システムの性能の推移はきれいな対数の線に載っており、毎年ほぼ倍増のペースが続いている。
そして、この傾向を延長すると、2020年ころには1位システムの性能は1ExaFlopsに達すると予想されるが、1位システムの性能の傾向はデコボコしており、これより早くなることもあり得るし、消費電力の制約から実現が遅れるという見方もある。
国別のTop500システム数であるが、米国が50%を占め、中国が15%で続いている。そして、日本は3位で6%となっている。
そして、英国の5%、フランスの4%、ドイツの43%で、ヨーロッパに13%程度のシステムが設置されている。
メーカー別では、IBMが213システムとトップで、HPが137システムで続いている。この2社で全体の70%を占め、残りの30%をCray、Appro、SGIなどで分け合っているという状況である。なお、11月9日にCrayがApproを買収すると発表されており、単純に合計すると合併後のCrayは10%のシェアを持つことになる。
アクセラレータとしてGPUやIntelのXeon Phiを付けるシステム数が2011年から急増している。システム数という点では2012年の6月から11月の増加は大きくないが、次の性能グラフを見ると、アクセラレータが提供しているFlops値は大きく伸びている。ただし、今回の伸びの大部分は、Titanに使われているNVIDIAのKepler GPUの貢献である。
今回のTop500全システムのFlops値の合計は162PFlopsであり、その中の37PFlops程度をアクセラレータが提供していることになり、全体の23%程度がアクセラレータのFlopsとなっている。
そして、次の示す電力効率では、上位の3システムでは2000MFlops/Wを超え、トップのAppro社のシステムでは2450MFlops/Wをマークしている。
そして、電力効率3位のBG/Qシステム以外は、このリストに含まれるシステムは、IntelのXeon PhiやNVIDIAやAMDのGPUを使うハイブリッドスパコンである。スパコンでは消費電力が一番大きな問題となっており、電力効率の高いシステムを作るためアクセラレータの採用は急速に進むと考えられる。